私が不定期的に何度も繰り返して読み直す本の中に、【 亜空間不動産株式会社 】というものがあります。
世の中の小説の中には、ハードSFという分野があります。SFとはサイエンスフィクションという意味なのですが、文字通りに受け取れば科学的な空想ということで、宇宙人や宇宙船が出てきたりとかタイムマシンとか未来人などが出てきたりとか、科学者やどこかの研究所が現在の科学水準を超えた発明をしたりとか、そんな内容が思い浮かびますが、ハードSFとはそういった単純なSF(サイエンスフィクション)ではなく、ストーリーの根幹に科学がベースにあるアイディアを置いてある作品とのことです。
つまりは、宇宙人や宇宙船が出て来るにしてもその宇宙人や宇宙船がどのように科学的に成り立っているのかをきちんと現代科学の先端の知識をベースとして説明していなければならないだろうし、タイムマシンや未来人についても同様だと言える。科学者やどこかの研究所が現在の科学水準を超えた発明をするということにしても、現代の科学技術を超えてはいるけど理論的には可能な発明であるとか、そんな感じのものだと私個人は理解しています。
さて、するとこんなことが考えられます。ハードSFと言えばだいたいにおいて物理学だとか量子力学、生物学、天文学(宇宙論)などのいわゆる理系の科学をベースとして書かれたものが思い浮かぶのですが、文系科学をベースにしたハードSFというものは無いのだろうか? と。
実はあるんですね。文系ハードSFと呼べるものが。それが今回紹介している【 亜空間不動産株式会社 】です。この小説の内容は、とある不動産会社の事務所の壁が崩れて穴が開いたのですが、その穴の先には亜空間とでもいうのか人跡未踏の広大な土地が開けていた。その摩訶不思議な土地をネタに不動産会社が大儲けしていこうと奮闘する話です。
しかしそんな土地を現代社会のルール、法律に則って売りさばくことが出来るのか? いったいどういう方法を取ればそんなことが可能なのか? という課題を本当に合法的に解決していくというのがメインストーリーです。
この、合法的に、というところが面白いところで、法学と宗教学という文系科学をこれでもかと駆使してストーリーが展開します。亜空間とか広大な土地について理系科学的に考察されている部分もありますが、どちらかと言えばそういった点はさらりと流されており、主軸は法学と宗教学です。
少なくとも文系ハードSFと言っても全く過言ではありません。現在は紙の本は絶版していますが、Amazonにて電子書籍のkindle版が出ていますので、ご興味のある方は是非一読してみて下さい。
私はまだ若い20代の頃にこの本の文庫版を購入して以来、何度も読み返し、kindle版が出てからはそれも購入してまた何度も読み返しているくらいはまる人には面白い本だと思います。
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