第二地球圏物語 前史
It is historical in front of The second Earth area story
妖精的日常生活 お兄ちゃんはフェアリーガール
作:紅衣北人 / ジャージレッド
第03話 どうしてこうなった!?
ちゅんちゅんとスズメが鳴いている。朝日がカーテンの隙間から差し込んできていてなんだかまぶしい。ベッドの上の布団の中でまどろみながら珠美香が思ったのは、そんなどうでも良いことだった。
「う、うーん」
微妙な違和感を覚えたのは寝返りをうった時だった。どうも衣服が身体にあっていないような気がしたのだ。より具体的に言うなら、ブラジャーがずれて外れているような感じだ。
既に珠美香も高校一年生。胸の発達は貧乳とは言い難いというレベルには成長している。まあ普通なみというところだ。ところが今の珠美香には、ブラジャーの中に収まっているはずの胸のふくらみがまるでどこかに行ってしまったかのように感じられたのだ。
「あれ?」
寝ているうちにブラジャーがずれてしまったのかと思った珠美香だったが、それにしてはなんだかきついし変だと寝ぼけた頭が小さな警告音を鳴らし始めた。
とりあえず布団の中で横向きになったまま右手を胸に当ててみる。すると手のひらに伝わってきた感触は硬かった。やわらかい胸のふくらみはどこへ行ったのか、そこにあったのは平たい胸板と申し訳程度についている小さな乳首だった。
「えっ?」
そこで急速に覚醒してきた珠美香の頭は、自分の身体に起こっているまた別の異変に気がついた。生まれてから今まで一度も感じたことが無い不思議かつ強烈な感覚だ。股間から分岐した何か新しい部分が脈打ち、痛いまでに充血し硬くなっているのだ。
何が起きているのか理解出来ない時、人は思考停止状態におちいる。その時の珠美香もそれだった。しかしそれはすぐに打ち破られた。廊下を挟んで向かいにある兄の幹也の部屋から聞こえてきた甲高い叫び声によって。
「わきゃーっ! なんで俺が妖精になっちゃってるのーーーっ!」
妖精という言葉を聞いた瞬間、珠美香の頭は完全に覚醒した。昨晩の夢の中のやり取りを完全に思い出したのだ。珠美香は自分の身に起こった違和感のことはひとまず無視して布団をはねのけると、すぐさま兄の部屋へと飛び込んだ。
「お兄ちゃんっ!」
するとそこに居たのは兄ではなく、ベッドの上で途方にくれている素っ裸の妖精の少女だった。身長はあっても25cmほどしかない人間そっくりな生き物。サイズ以外で人間とは違う点を探そうと思ったら、その背中に生えている小さな天使のような羽だろう。純白の鳥の翼のような小さな羽が意味も無くパタパタと動いている。
妖精らしくその身体は華奢であり、きめの細かな白い肌をしているが、病的ではなくあくまでも健康的である。青い目はともかく、その髪の毛は人間にはありえない青色をしている。耳にかぶるくらいのショートヘアだ。
ちなみにどちらかと言えば胸は薄く、幼児体型からようやく一歩抜け出したというような印象だ。
「ええと、誰?」
お互いの口から漏れたのはまったく同じ言葉だった。
「もしかして幹也兄ちゃんなの、かな?」
確信があるわけでは無いが、状況からしてほぼ間違い無く目の前にいる妖精が自分の兄のような気がした珠美香はそう訊ねてみたのだが、その妖精の返答は予想外の言葉だった。
「まさかとは思うけど珠美香なのか? お前、いつの間に男になっちゃったんだ」
言外に自分が幹也であると認める発言をする妖精少女。いやこの場合は幹也と言うべきだろう。しかしそれを聞いた珠美香は兄が妖精少女に召喚されてしまったという事実に驚いてばかりも居られなかった。
「誰が男なのよ」
いぶかしむ珠美香。しかし起きた直後の違和感を思いだし、ハッとなるのだった。
「いや、だからお前が」
そう言いつつ妖精な幹也は珠美香を見上げている。妖精サイズの身体になった状態では、通常サイズの人間を、まるで3~4階建てのビルを見上げるような感覚で見なければならないという事実そのものに驚いていた。まあそれよりも妖精になってしまったこと自体に驚けよと言いたいが、人間、現実逃避をしたい時というものはあるものなのだ。
「うそっ!」
慌ててまずは自分の胸をもう一度触ってみる珠美香。やはりそこには柔らかな膨らみは微塵も無かった。平らな胸板があるばかりだったのだ。寝起きの際のことは夢ではなかったのだ。
「無い」
高校生女子ともなれば自分の胸が膨らんでいるということは当たり前のことなのだ。その当たり前が当たり前の状態では無くなっているのだから、それはもう目の前が暗くなったとしてもおかしくはない。
「まさかここもっ!」
パジャマのズボンの中に手を入れて股間を触ってみる。ショーツの上からではあったが、何かがその中に硬い状態で存在しているのが感じられた。珠美香の額にたらりと冷や汗が流れる。
「そうか、俺は妖精になっちゃったけど、珠美香は男になっちゃったのか」
人間から妖精へと身体が変化した幹也のほうがショックが大きすぎて、逆に冷静になってしまったのだろうか。幹也は淡々とした口調でそう呟いた。寝坊も 10分間の遅刻なら焦るが、2時間も寝坊しての遅刻なら逆に気持ちに余裕が出来てしまうのと似ているのかもしれない。いわゆる開き直りだ。
「なに冷静になってるのよ。お兄ちゃんだって妖精の女の子になっちゃってるくせに」
焦っているときに冷静な人間を見ると、どうして同じように焦ってくれないのだろうとイライラしたり、やきもきしたりすることがある。珠美香は幹也の態度に怒りを覚えるのだった。
「へっ? 女の子?」
幹也は珠美香の言葉を聞いて目が点になった。自分自身を指差しながら、そこで動きが完全に止まっている。どうやら妖精になってしまったことは認識していたものの、性別まで変わっていたことには気がつかなかったらしい。
「そう、女の子」
珠美香は幹也の机の上から手鏡を取ると、幹也の目の前に差し出した。
そしてそこに幹也が見たものは、確かに青い目と青色のショートヘアをした、やや幼児体型の面影が残っているような感じのぷにぷにっとした妖精の女の子だった。
「うそーーーっ!」
珠美香に続いて幹也も同じ反応をしたのは言うまでも無い。
その後のことは色々あったのだが、簡単にまとめると幹也は夢の中で妖精に召喚されたわけではなかったらしいという結論になった。あくまでも妖精に召喚されたのは珠美香であり、なんらかのアクシデントにより幹也がその妖精の召喚魔法に巻き込まれてしまった結果により妖精になってしまったのだと推測されたのだった。
結果的に妖精に召喚された直接の本人である珠美香は人間の少年の身体になり、兄の幹也は妖精に召喚されてもいないのに妖精少女になってしまった。そしておそらく妖精のエルフィンは人間の少女の身体になっているのだろうと推測された。
暫定的に玉突き召喚事故と呼ばれることになった世界でも唯一の事例である。このことにより珠美香と幹也のことはしばらくマスコミにも騒がれて、二人の存在は、実名は秘匿されていたものの、けっこう有名になってしまったのはいたしかたないことだった。
但し、単純な玉突き事故ではないのも確かだった。幹也は妖精少女になっているのだが、その容貌は珠美香が見たエルフィンの姿とはずいぶんと違っている。
エルフィンは金色の長い髪をした青い目の妖精少女だったのだが、妖精少女化した幹也は青色のショートヘアである。確かに目はエルフィンと同じように青く、背中の羽も白い鳥の翼のような羽だったが、エルフィンが妖精らしく出るところは出て引っ込んでいるところは引っ込んでいるボンキュッボンな体型であったのに対して、妖精な幹也の身体は幼児体型をようやく卒業したかどうかというものだった。
そして珠美香の身体が少年化したとは言っても、兄である幹也の身体に魂が移し換えられたのかというとそうではない。今の珠美香の身体は幹也を限りなく女性っぽくしたような容貌と言えば当たらずともいえ遠からずという感じであり、幹也の元々の身体とは似て非なるものだからだ。
何がどうしてこうなったのかということは今もってまったく分からないが、とにかく長谷川家の長男である幹也は妖精少女化し、長女である珠美香は少年というか少女とみまごうばかりの美少年になってしまったのだった。
既に妖精による召喚事件が正式に確認されてから十数年になろうとしている日本社会においても今回の件は多少想定外の部分があるにはあったが、少なくとも幹也に関しては妖精化に伴う戸籍等の変更に関する法律に基づき滞り無く役所における事務手続きが完了することとなった。
つまり戸籍は人間・男から妖精・女に書き換えられ、名前も女性にふさわしい名前に変更が可能ということで、幹也の音を活かして美姫という名前になったのだ。
しかし問題は珠美香のほうである。妖精に召喚されかけたとはいっても結果的に妖精に召喚されたわけではない。少年化して女性から男性に変わったわけだが、妖精化を伴ってはいないので前述の法律による戸籍変更等は認められないということになる。
結果的に見た目はともかく遺伝子レベルから見ても肉体的には男性となってしまった珠美香なのだが、心は女性のままであることに変わりは無いので、いわば後天的な性同一性障害とでも言うべき立場に立たされたということになる。
しかし思春期の若者であるからして新しい性別への順応性も高いことが期待できるし、また妖精サイズとは違い通常の人間サイズであることから、将来的にどうしても自己の性別に関する認識の問題が残ってしまった場合には性転換手術をしてしまうという選択肢も無くは無い。
であるならば少なくとも珠美香が成人してすべての判断を自己で行えるまでは戸籍関係のことは保留しておこうということになったのだ。つまり珠美香の戸籍は未だに女性のままであり、名前のほうも珠美香のままということなのだ。
元女の子だった美少年であり、今は男であるにもかかわらず妖精少女の妹でもあるという、詳しく説明されないとよく分からないのが現在の珠美香の立ち位置なのだ。
話は現在に戻って緑ヶ丘高校2年4組の教室である。1時間目の授業も終わり、珠美香と美姫の席の周りには間近で妖精を見ようとする生徒が集まっていた。妖精が珍しくは無い時代とはいえ、それがクラスメイトとなるのはまた別なのだろう。
その輪の中心では、珠美香が美姫に対して厳しい口調で問い正していた。
「転入してくるなら転入してくるで、どうして教えてくれなかったの」
「だって、驚かせたかったしぃ~」
美姫の返答は往年のコギャルを思わせる口調だった。それがかわいらしく感じるのは妖精サイズの肉体のなせる技というか錯覚というか、まあとにかくかわいいは正義ということなのだろう。
「もしかしてお父さんやお母さんまでグルなの」
「珠美香をびっくりさせる計画の賛同者という立場かな」
「結局グルなんじゃない」
珠美香はため息をつく。幹也が妖精少女化して美姫となってからしばらくして、美姫は事あるごとに何らかのいたずらというかおふざけをするようになっているのだ。しかも両親も悪ノリしているのか、美姫のそういった行動を止めようとはしない。せいぜい苦笑するぐらいだ。
「でも、なんで1年も休学していたのにわざわざ妹の高校に転入してきたわけなの」
「違うでしょ。珠美香は妹じゃなくて、かわいい弟なんだから」
「法律的には妹なの。で、お兄ちゃん、なんでなの」
珠美香のこだわりとして、身体は少年化したとしても自分はやっぱり女の子であるという自覚を忘れたくは無いというものがある。自分は長谷川家の長女であり、目の前の妖精少女はどんな姿であろうとも兄の幹也なのである。
「法律的なんてことを言うなら、私は珠美香のお姉ちゃんだよ」
へっへっへっと、いたずらっこの様に笑う美姫。それを見て周りの生徒達は美姫の可愛さにうちのめされかけた。古来より日本においては小さいものは可愛いものと相場が決まっているのだ。まあ珠美香の場合は逆に神経を逆撫でされるだけだったのだが。
「だから、なんでなの」
「いや、だから詩衣那さんに聞いたんだよ。開発中の魔法増幅装置は、試験を受けて資格を取らないと購入も使用も出来なくなるらしいって」
珠美香の口調が不穏に変わってきたのを敏感に感じた美姫は、一転して素直に話し始めた。妖精サイズから見ると普通の人間でも巨人に見えるのだ。その迫力はただものではない。
ちなみに美姫が話した魔法増幅装置とは何かということは説明すると長くなるのだが、説明しないと分からないのでなるべく手短に説明してみよう。
そもそも妖精は機械に弱い。妖精世界の本来の妖精が星の世界からやって来たというロボットに近づくと気分が悪くなり、最悪気絶したり命を落としたりするといわれているが、それはこの世界の元人間の妖精たちにも当然に当てはまる。パソコンやネットに接続された携帯電話などに近づくと、やはり気分が悪くなったり気絶したりするというのは前に説明した通りだ。
というわけで妖精に召喚されたら最後、ネットに関係するような機器の恩恵を受けられなくなるし、まともな働き口も無くしてしまうということが問題となっていた。
しかしここに逆転の発想があったのである。
この世界の元人間の妖精は、異世界の妖精が使うような各種様々な魔法は使えないが、それでも唯一使える魔法があった。それは飛行魔法である。妖精には種類の差はあれ背中に小さな羽が生えている。そして妖精が飛ぼうという意思を持つことに連動してその小さな羽が発光現象とともに伸びて大きくなり、飛ぶことが出来るようになる。
羽が大きくなるとはいっても、その羽を動かして航空力学的な揚力を得る為には大量の筋肉が必要になるはずなのに、妖精の背中にそのような筋肉の存在は認められていない。非科学的なことは承知で言うなら、妖精は魔法の力で飛んでいるという結論になる。妖精の羽は魔法で出来ているのだ。
事実、羽を大きく広げた妖精の側でパソコンを起動すると、その瞬間に妖精の大きく伸ばされた羽はまるで空気中に溶けてなくなるように消えてしまうのだ。ちなみに羽が消えるのが先で、妖精が気絶するのが後になることから、パソコン等の機械は妖精が操る魔法に直接干渉する力を持つと推測された。
また生物学的にありえない妖精といった存在も、魔法によって存在することが出来ていると考えるなら理解できなくは無い。魔法によって存在をサポートされているからこそ、その魔法に悪影響を与えるパソコン等の機械の側に寄ると妖精は気分が悪くなったり気絶したりするのではないかということなのだ。
であるなら逆転の発想である。パソコン等の機械が妖精の魔法に悪影響を与えるということは、パソコン等の機械は魔法に干渉することが出来るということであり、うまく機械のほうを調整すれば、魔法への悪影響を無くしたり、場合によっては妖精の魔法に対して良い影響、端的に言うなら妖精の持つ魔法力をパワーアップさせることが出来るのでは無いかと考えたのだった。
とはいってもどのようにパソコンなどを調整すれば良いのか分かる訳がない。そもそも魔法とは何かということがまったく分からないのだ。そこで考え出されたのが実際にパソコンのハードやソフトや果ては配置などの様々な条件を変えた上で妖精の反応を見てみるというやり方だった。別名、いきあたりばったりという。
この方法は一見すると非科学的に思えるかもしれないが、病気に対してどのような物質が効化があるのかを確かめる方法と同じだと考えれば極めて科学的だとも言える。
このやり方を始めたのが戦前は戦闘機を作っていて今でも防衛省との取引がある加賀重工航空機製作部門に属する研究所だった。加賀重工の会長の孫娘である加賀詩衣那が妖精に召喚されてしまったのを機に開発がスタートしたといわれている。
ともかく当初はかえって妖精への悪影響が増したりしたのだが、あるとき劇的な成果をあげることになる。妖精への悪影響がまったく無くなったのだ。ここに妖精へのパソコン等の悪影響をキャンセルする装置、いわゆるキャンセラーの原型が完成した。
しかしこのままでは装置自体が大きすぎて妖精が携帯することは無理なことから、実用性に若干の問題があった。自宅や事務所、そして公共施設等へ設置するのなら問題ないのだが、身長が25cm程しかない妖精が無理なく携帯出来る大きさにまで小型化することが求められたのだ。
妖精の魔法がどのように発動するのか、そしてどのようにパソコン等の機械からの悪影響を受けるのか。そしてキャンセラーはどうして妖精への機械からの悪影響を排除出来るのか。それらの基本的な原理はまったく分からないまま、多くの電子機器が辿った道をなぞり、キャンセラーは妖精が身に付けることが楽に出来る腕輪サイズまで小型化されたのがようやく3年前のことである。
ボタン電池で作動するそのキャンセラーは、一つの腕輪でも半径数メートル以内に存在するパソコン等の電子機器からの悪影響を完全にキャンセル出来る。しかし電池切れや故障の可能性もあるので、妖精は通常正副二つの腕輪型のキャンセラーを両腕にはめていることが多い。もちろん美姫も両腕に白銀に輝く腕輪型キャンセラーをはめている。
さてキャンセラーが小型化されて多くの妖精がキャンセラーを使用し始めた頃、新たな現象が報告されるようになった。一番多く報告されたのは妖精の飛行能力の増大である。単純にキャンセラーを身に付けていると普段より格段に早く飛ぶことが出来るようになったのだ。
さらに全員というわけでは無いのだが、妖精の中には物語やゲームの中でしか出てこないような魔法を使うことが出来るようになった者もいた。たとえば発火魔法である。但しせいぜいライターの炎程度のものだったが。
というわけで加賀重工航空機製作部門の研究所では、今度はキャンセラーに続き、妖精の魔法を強化するブースターの開発に着手していたのだ。
ちなみに偶然だが加賀重工航空機製作部門傘下の工場に長谷川家の家長である長谷川徹也が勤務していたということもあり、世界でも唯一の玉突き召喚事故による妖精化および少年化をした美姫と珠美香は、事ある毎に研究所の実験につきあわされることになっていた。世の中、ご都合主義のような展開というのも割合とあるものなのだ。
ともかく研究所には美姫や珠美香も割と頻繁に訪れて色々と世間一般にはまだ流れていない情報を得ることも多くあるのだが、今回、美姫が聞いたのは開発中のブースターの件だった。
性能が予想以上に良すぎるのだ。
キャンセラーには妖精へのパソコン等からの悪影響をキャンセルするだけではなく、妖精が本来持っているであろう魔法の力をわずかばかりだが強化する能力も持ち合わせているのだが、ブースターは当初から魔法力強化の面に重点を置いて開発されただけあって、キャンセラーと比べて魔法力強化の効化は半端ではない。出力さえ上げれば妖精ではない普通の人間にも効果があるのではと研究所内では噂されているほどなのだ。
しかしそれほどの効果があるからこそ、開発も終盤に差し掛かり実際に販売するに当たって、経済産業省から指導を受けたのだ。販売に当たっては、悪用されることが無いように一定の資格試験を実施し、免許を交付する事を法律で定める予定であると。
「というわけでさあ、魔法増幅装置、通称ブースターを購入する為には免許を取らないといけないんだけど、その免許の試験を受ける条件が、高校卒業以上なんだよね。だから今日から高校生に復帰しちゃったというわけ」
美姫は珠美香に説明し終わると、机の上で腕を組み、うんうんとうなづいている。
「まあ、話は分かったけど、なんで緑ヶ丘高校なの。お兄ちゃんが通っていた鳴門高校に復学じゃなくて」
「お姉ちゃんって言ってよ」
珠美香の発言を訂正する美姫。
「つまりさ、やっぱり妖精の身体だと色々と不便でしょ。教科書を持って通学するだけでも大変なんだから。その点、弟が通う学校に同学年で転入するならずいぶんと楽になるわけだし。」
「だからって、そんな簡単に転入出来るわけないでしょ」
常識で考えたら美姫の言い分は単なる我がままということになる。珠美香はそこを指摘したのだが、美姫は余裕の態度を崩さない。
「ちゃんと転入試験受けて合格したもーん」
「え、いつ」
「特例で4月に入ってすぐ。ま、とにかくこれからよろしくね。珠美香も、それからクラスのみんなも」
あきれる珠美香とその周りに集まっている生徒たちに向かって美姫は愛想をふりまいた。みんなも笑顔でそれに応える。どうやら状況についてこれていないのは珠美香だけのようだった。
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