兄妖 34話

                        第二地球圏物語 前史

It is historical in front of The second Earth area story

妖精的日常生活 お兄ちゃんはフェアリーガール

作:紅衣北人 / ジャージレッド



第34話 Yes 爆乳! No 爆撃っ! いやいや貧乳こそが正義です


「ほほう、では、魔力の回復に最も良いのは、できるだけ新鮮な食品ということですか?」

 酒が回ってはいるものの、ほんのりと頬が赤くなる程度にしか酔っていない剣持主任が、白竜王吹雪の言葉を興味深そうに聞きながらうなづいていた。

 すでに酒宴はピークを過ぎ、あちこちに空の食器や空き缶にペットボトル等が散乱している。必要とされる料理や飲み物のあまりの多さに、召喚ゲートを利用した地上とのやり取りも遅れ気味になっているのだ。

「雄高君に珠美香ちゃん、今のうちに急いで空いた皿を召喚ゲートに突っ込んでっ! 地球側も追加の料理で溢れているらしいから、あと1分以内にっ!」

「了解っ! ていうか、まだ食べるんだね。白竜王吹雪のおじいさん」

「おじいさんの姿は仮で、本体はあの竜体だからね。まだまだ序の口じゃないのかな?」

「でもいい加減にしてくれないと、宇宙船の中の空気が臭いで大変になっちゃうわよ。っていうかもう大変だし」

 というわけでそのようなやり取りをしながらも雄高と雄高を少しでも手伝おうとしている珠美香が、空になった食器等を回収しては夏樹が作って維持している召喚ゲートに突っ込んでいる。

 そして時間差で召喚ゲートから手渡されてくる料理や飲み物を受け取って、皆の前、というか主に白竜王吹雪の前に持っていくという作業を繰り返している。

 そんな三人を横目に見ながらもうひとりの裏方要員である海斗は、宇宙船うみねこ2世号をフェアリードライブにて操っていた。既に海斗が酒宴から離れて久しい。

 現状の宙域に留まり続けるためには、唯一の目印となる白竜王吹雪の竜体を中心として擬似的な周回軌道を取る必要があったのだが、夏樹が召喚ゲートの維持と通信に忙殺されだしたので宇宙船の操縦は海斗が受け持つことになったのだ。

 さて、それはそれとして、白竜王吹雪の答えはシンプルだった。

「魔力の源は、生き物が生き物で在るが故に持つ生命エネルギーといえば良いのか、あるいは魂が持つエネルギーといえば良いのか。ともかくそういったものじゃからして、活きの良い食材ほど魔力の回復に効果が有るということになるわな」

 話してる間も、白竜王吹雪の手は休むことなく目の前の料理や飲み物に伸ばされている。そしてそれらの飲食物は、白竜王吹雪の口の中に流し込まれるようにするすると入っていく。

 なお白竜王吹雪の両脇には江梨子と早苗が控えて交互にお酌をしたり、時にはご機嫌を取るために箸やスプーンで取った料理を口まで運んであげてたりしている。

「白竜王吹雪のおじいさん。はい、あーん」

「ほほっ、これは早苗さん。すまないのう。ほれ、あーん」

 早苗がスプーンで掬って差し出しているのは野菜たっぷりの八宝菜であった。

「ほほう、早速、ワシが今言ったことを理解したようじゃな」

「はい、調理される直前まで細胞が生きていた野菜ほど新鮮な物はないですからね」

 軽く驚きの表情をみせる白竜王吹雪と、したり顔の早苗は、共に笑みを浮かべるのだった。

「冷凍冷蔵技術が発達している今日、肉や魚はその細胞が死んでから日が経っていることが多いので、野菜と比べると見た目の新鮮さと本当の意味の新鮮さは違うということですね?」

 なるほどとうなづきながら聞いていた剣持主任が、一言口を挟む。

「その通りじゃ。まあ、魚を生きたまま調理するという鯛の活け造りとかいったかのう、ああいうものなら生命力に溢れているから、魔力の補充には最適かもしれんのう」

 暗に次の料理の要求をする白竜王吹雪。まだまだ食べる気満々のようだ。

「……夏樹さん。地上に連絡をして、鯛の活け造りを注文してください。数は例によって材料がある分だけ。それとお酒の追加も」

「了解です。詩衣那さん」

 加賀詩衣那、白竜王吹雪に付き合って飲んでいるうちに既に酔いつぶれる一歩手前となっているにもかかわらずやるべきことはやっている。仕事熱心な妖精である。

 ちなみにその頃、幼児の結菜とドラゴンバタフライのピイちゃんは、それぞれ美姫にもたれ掛かりながらお昼寝の真っ最中だ。身動きのとれない美姫は、困ったような幸せそうなような複雑な顔をしている。

 まがりなりにも本作品の主人公のひとりであるにも関わらず、何の台詞も無いのは如何なものなのであろうか?

 さて、そんなこんなで、主に白竜王吹雪が主役となる酒宴は続いていくのだったが、さすがに未成年組は飲酒をしていないものの全体的に酒が回った席となると、なかなか普段では質問しづらいことも聞きやすくなる。

 今だとばかりに水城江梨子はキラリンとメガネのレンズを仕様通りに一度光らせると、おもむろに白竜王吹雪へと質問をした。

「そういえば妖精の胸の大きさと魔力の強さは関係しているとのことですが、それは人間についても言えることなんでしょうか?」

「ふうむ。なかなかに良い質問じゃな。ま、しかし答えは単純にして明快じゃ」

「つまり妖精と同じく、人間の女性も胸が大きい人ほど魔力が強いということでいいですか?」

「民族的な平均値から比較して大きな胸をしている女性ほど生命力が強く、魔力も強い。まあ、そう思ってもらっても間違いではないのう。平均して妖精よりも魔力が強いということはないじゃろうが、ほれ、早苗さん。お前さんはなかなかに魔力が強いはずじゃ」

 魔力の源は生命力であり、大きなおっぱいこそ生命力の象徴であるという、ある意味ベタな設定(?)というか解説をする白竜王吹雪。

 質問をしてきた江梨子に回答し終わると、次にその視線を早苗のおっぱいに目を向けて、うんうんとうなづいている。もしかすると本当は揉みたいのかもしれないが、流石に自重しているということだろう。

「ふぇっ? 魔法……、私にも使えるんですか?」

 ぷるぷるぷるんと揺らしながら、早苗が驚きの声を上げる。もちろん何を揺らしているのかというのは言うまでもなくアレ、おっぱいである。

「うむ、もちろん今すぐ素の状態で魔法を使うのは無理じゃろうが……」

「キャンセラーやブースターの影響下でなら、胸があるのか無いのか分からないど貧乳な状態になってしまった珠美香さんでも魔法が使えるわけですから、爆乳の早苗なら魔法を発動させることが可能ということですね」

「誰が【ど】貧乳なのよっ! ……せいぜい貧乳だもん。ね、雄高君」

 遠慮の無い評価を混ぜた返事をする江梨子。その江梨子に対して激しくツッコミを入れる珠美香。

 そして雄高の手伝いということで皆が食べ終わった皿などの片付けをしていた珠美香は、すかさず雄高の腕を掴むとそのささやかすぎて泣けてくる薄い胸を雄高の腕にぷにっと押し付けた。

 薄かろうがなんだろうが、女性の胸というのはぷにっとしているのだ。心配ない。

「はははっ、珠美香ちゃんのおっぱいは僕にとっては最高のおっぱいだよ」

 既に貧乳教の信者と化している雄高にとり貧乳こそ至高であったのは、幸せというものだったのであろう。

「……雄高君」

「珠美香ちゃん……」

 感動した珠美香は、雄高の腕に胸を押し付けるにも更に力がはいる。但し貧乳なその胸は既に十二分に押されて潰れきっているので、更に力を入れる意味など無いのであるが、そこはまあ気持ちというやつである。

 というわけで珠美香と雄高はふたりの世界に入り込んでしまったのだが、まあいつものことなので、周りからは苦情も出てこないのは言うまでもない。

「魔法が使えるって言っても、どんな魔法なら使えるんですか?」

 さて、美姫が爆乳キャラになってしまった現在、元祖爆乳キャラとしての存在意義に疑問が生じている早苗は、意外と真剣な表情で白竜王吹雪に問いかけた。

「使える魔法はすべて召喚魔法と考えれば良いのう」

 白竜王吹雪はそう一言答えると、飲食を再開してしまう。白竜王吹雪。実は見た目よりも酔っているのかもしれない。

「早苗さん、それでは私のほうから解説して差し上げましょう」

というわけで後を続けるのは剣持道彦主任であった。

 ここで剣持主任は、加賀重工航空機製作所開発部新技術研究班、通称【魔法研究所】のメンバーならば誰でも知っている内容を簡単に説明し始めた。

 日本人がイメージする魔法と言えば、呪文とともに何かを出したり、動かしたり、あるいは自身を変身させたりするようなものと相場が決まっているが、実際の魔法は『無から有を生み出すことは出来ない』のが現実である。

 質量保存の法則は魔法においても生きているらしく、魔法で水を出した場合、無から水を出したのではなく、魔法でどこからか水を召喚しただけだという。

 それは炎や雷も同様であるし、木の実などの食べ物や、鉄や金などの鉱物資源についても同じだという。

 物を動かすということに通じる妖精が使う飛行魔法も、正確には飛行・・魔法ではなく、行きたい方向にある空間を連続的に召喚し続けるというものであり、結局は召喚・・魔法であるという。

 さらに言うなら変身魔法というものは確認はされていないが、長谷川美姫(元幹也)と珠美香、そしてエルフィン皇子(元皇女)ら三人による玉突き召喚事故による肉体の構成要素の混ざり合いというものならば確認されている。

 それもまた無から有が生み出されるような形で変身しているわけではなく、あくまでも【混ざり合い】という形で、変身してしまったということであり、結局はこれも事故によるものであるが召喚魔法には変わり無いという。

「じゃあ、えーと、結局のところ何かを召喚する魔法しか出来ないということですか?」

「まあ、その通りだ」

「ふふ、興味深いですわね」

 いまいち理解が完全では無いが、とりあえず召喚魔法なら可能と理解した早苗に、何故か偉そうに答える剣持主任。そして仕様通りにメガネをキラリンとさせる江梨子。まあいわゆる平常運転である。

「……早苗ちゃん。もしも何かを召喚するなら、最初は自分が持っているものを召喚するのがやりやすいよ。召喚魔法っていうのは、他人が所有するものは召喚出来ない仕組みになっているらしいから」

 左右それぞれから結菜とピイちゃんに寄りかかられている美姫は、召喚魔法を使う先輩としての助言を行う。もちろん結菜とピイちゃんを起こさないようにそっと小声でしているあたり、【おかあさん】していると言える。

「分かりました。美姫お姉さん。自分が持っているものなら大丈夫なんですね。……じゃあ、ええと、マジカルコスチューム召喚っ!」

 その瞬間、それまでタンクトップとホットパンツ姿だった早苗は、召喚魔法が発動した際になぜか発生した虹色できらびやかな光がゆっくりと消えていくと、どこかのアニメに出てくるようなふりふりピンクな魔法少女のコスチュームにチェンジしていた。

「うそ、本当にできちゃった」

 自分でやっておいて出来ちゃったもないものだが、早苗は可愛らしくも動きやすそうな、まるでアニメの魔法少女が着ているような衣装を確認していた。

 ステッキは持っていないので、おそらく格闘系の魔法少女なのだろうが、格闘をするには揺れすぎる乳が邪魔になるのではと要らぬ心配をしたくなったりして。

「……早苗ちゃん。何、それ?」

「あーー、もしかして魔法少女 舞花(まいか)?」

 戸惑う美姫に対して、早苗の着ているコスチュームを見て、一発でそれが何のアニメのキャラクターの衣装なのかを当てたのは雄高であった。佐藤雄高、実はそういった方面の趣味もあったらしい。

 ちなみにこの魔法少女 舞花まいかというキャラクターは、困っている人が居ればどこからともなく参上し魔法で困りごとを解決してくれるのだが、そのついでにいつも何かしらの失敗をしてしまうという。

 そしてお察しの通りその失敗を見ての決めのセリフが、その大きな乳を揺らしながら言う『ま、いっか♪』というセリフであるという身も蓋もない設定のアニメとして、何故か(?)大きなお友達に人気となのだという。

「雄高君すごーーいっ! そして早苗ちゃん、その衣装すごく可愛いわよっ!」

 その美姫と同じくそのアニメの存在を知らない珠美香は、単純に、『すごい』と喜んでいる。お前は恋人がすることなら何でも肯定してしまうのか? と、周りの心の内はそんな言葉で満たされていたのだが、まああえて口にする者はいなかった。うむ、賢明である。

「ありがとう。珠美香ちゃん。なんだか一発でできちゃったけど、こんなものなのかしら?」

「いやいや、今のところ珠美香君以外の人間で魔法を発動させることができたのは、早苗さんだけのはずだ」

 少しばかり拍子抜けの様子の早苗に対して、剣持主任が心底感心したという口調で返事をする。

「はい。今まで何人もの被験者が魔法の発動に挑戦していますが、人間で成功したのは珠美香さんに続いてニ例めです」

 詩衣那が語る魔法発動の成功者は人間で二例目という事実に、周りの者も驚きを隠せない。

「ほほう、興味深いですね。乳ですか? やっぱり乳の大きさが問題なのですか。それにしては珠美香さんは乳が小さくてもというかほとんど無くても魔法が発動できるのですから、それ以外の要素もあるのでしょうが……」

 一方、早苗のすぐ側にいた女子高校生としては平均的な大きさの胸を持つ江梨子は、例によってメガネをキラリンとさせながらそう言ったのだが、どことなくメガネのキラリン度合いが仕様とは違って鈍いような気がする。

「……もしかして江梨子ちゃんも魔法を使おうとかしてたの? で、それに失敗したとか?」

「美姫お姉さま、まさしくその通りです。ふ、ふ、ふ、出来るものならブースターやキャンセラーを改良してみたいものですね。そうしたら私も魔法が使えるかもしれないし」

「ほほう、その気があるならうちに来てみたらどうかね。コネで入社させて上げることは出来ないが、江梨子君だったら推薦するくらいなら出来なくは無いぞ。……詩衣那君、大丈夫だよな?」

「ええ、まあ、最低限、書類審査と筆記試験は自力で突破していただくことになりますが、道彦さんの推薦があれば、一次面接以降の過程は形式的なものにすることも可能は可能ですね。江梨子さん、よろしかったら最低限大卒資格が必要ですから、大学に進学する予定でしたら卒業後はうちに来てみますか? ちなみに学部は問いませんので」

「ありがとうございます。もちろん進学はするつもりでしたから、ぜひ検討してみたいと思います」

 この瞬間、数年後における剣持【所長】の右腕として様々な魔法関連技術を開発することになる水城江梨子【主任】が誕生する道が開かれたのであったが、その話はまた別なところでしたいと思う。

 そして見事に魔法を発動させることが出来た大島早苗であるが、後日、【爆乳の魔法使い】として世間に知られることになる。数年後には比較的多くの人間が魔法を使うことが出来るようになっているのであるが、単独での魔法力の強さは他の者の追随を許さないほど、早苗の魔法力は強かったからだ。




「……ええと、まもなく妖精世界から召喚された地球に到着します。まずはぐるっと一周するようにすればいいのかしら?」

「早苗ちゃん、落ち着いてね。何かあったらすぐにサポートするから安心して」

「ありがとうございます。美姫お姉さんが助けてくれるなら百人力ですね」

 さて、白竜王吹雪は大いに食べ、そして大いに飲んだことによって、その魔力を回復させることが出来た。そこで美姫たちは白竜王吹雪としばしの別れを告げ、うみねこ2世号はふたつの地球の中間地点より離れて妖精世界の地球へと向かうことにしたのだった。

 その際、宇宙船を操縦出来る人材は万が一を考えるとひとりでも多い方が良いということになり、妖精世界の地球までは早苗にやってもらおうということになったのだ。

 フェアリードライブ搭載の宇宙船を操縦するのに、まだ免許や資格等が必要だと決められていないが故の決定であった。

「それにしても早苗ちゃんはよく初めてで宇宙を飛べるよね。妖精でも無いから空を飛んだ経験もないはずなのに」

 操縦席とされている場所にて、横に座る早苗を見ながら美姫が改めて感心する言葉を言う。

「うーん、なんででしょうね。確かに空を飛んだ経験はありませんけど、ゲームでなら飛行機を操縦したことはありますよ」

 そこで早苗は超有名なフライトシュミレーションゲームの名前を挙げる。

「えっ、早苗ちゃんもそのゲームをやってるのっ!?」

「はい。もっとも、お父さんがやっているのを貸してもらっただけですけどね」

「へえ、そっかあ。じゃあ、空を飛ぶイメージトレーニングは大丈夫ってわけなんだね」

 そんなことを話している間にも、うみねこ2世号は妖精世界の地球の衛星軌道高度に到着する。

「……それでは早苗君、見える範囲でいいから、工場や都市がありそうな上空を縫うように飛行して妖精世界の地球を一周してから、秋津島皇国上空へと行ってみようか」

「はい、剣持さん。それはいいですけど、やっぱり着陸は美姫お姉さんに任せないとダメですか?」

「平行世界の地球とはいえ、結局のところは異世界の地球だからね。しかもそこには異星からの侵略者でもある機械達も居るとなれば、僕としてはせめて大気圏突入と着陸は経験者に任せたいところだね」

「そうですか、しょうがないですね」

 流石に早苗も無理を言うつもりは無い。というか宇宙船に乗り込むまでは爆乳とはいえ普通の女子高生でしかなかったのに、今はフェアリードライブ搭載の宇宙船を自在に操っているのだ。これで文句を言ってはバチが当たるというものだ。

「私も出来るものなら操縦したいのに出来ない。ちょっと悔しいですね」

「まあまあ、江梨子ちゃん。練習すれば、きっと江梨子ちゃんにも魔法が使えるようになるかもしれないし」

 操縦席の後ろでは、もちろん仕様通りにメガネをキラリンとさせつつ今の状況を悔しがる江梨子と、それを慰める珠美香が居た。

「そうだといいんですけど。……白竜王吹雪のおじい様は、おっぱいの大きさが魔法力の強さに直結するようなことを言っていましたから、早苗が魔法を使うことが出来て私が魔法を使うことが出来ないというのは、まあ、納得出来なくは無いです。そこはいいのですけど……」

 そして江梨子は横に立つ珠美香の胸をチラリと、というかジロリジロジロと舐めるように見るのだった。

「な、何を見てるのよ」

 あまりにもジロジロとした江梨子の視線に、珠美香はまるで視線で触られているかのような妙な感覚を味わってしまい、その声は裏返って変な感じになってしまった。

「もしかすると感度が関係してくるのかもしれませんね。小さい胸のほうが感度が良いという話を聞いたことがありますし」

 江梨子は何やら自分だけで納得すると、おもむろにその手を横に立つ珠美香のど貧乳、いや、そのささやかな胸へと伸ばし密着させると、さわさわと動かしはじめた。それはもう遠慮なく。

「え、うわきゃっ! 江梨子ちゃん、なな、何をっ!? え、ダメだから、それ以上触ったら、ダメだから。あン、ううっ!!」

 感度はよろしいようである。頑張れ珠美香。江梨子ちゃんが納得するまで。まだ江梨子ちゃんのメガネはキラリン、キラリンしたままだぞ、と。



 一方、操縦席では美姫が、後ろから聞こえる珠美香の喘ぎ声に、呆れた声を上げていた。

「何をやっているかと思えば……」

「美姫お姉さんも感度を確かめてもらったらどうですか?」

 本気か冗談か、もしも冗談だとしたら笑えない冗談を言うのは早苗である。

「いい。間に合ってます。ていうか、小さくても大きくても感度は変わらなかったし……」

「あら、既に確認済みでしたか? これは失礼しました。そうですねえ。そういえば私も、おっぱいが大きくなったからといっても感度が悪くなったような気はしませんし……」

「ふふふ、女性の胸が小さいと感度が良いということについて、より詳しく解説してあげましょうか?」

 美姫と早苗がお互いに小声で乙女の事情について談義をしていると、どこからともなく妙な笑顔をした夏樹が飛んできた。

「そういえば夏樹君は、女性の胸は【ちっぱいのほうが感度はいい】って主張しまくってたよね」

「手短にお願いします。夏樹さん」

 美姫も早苗も、興味自体はあるようだ。

「ゴホン。それでは教えてさし上げましょう。僕が言うのも何ですが、おっぱいの大きさと感度の関係は、実は大いに関係があるとも言えるし、関係が無いとも言えるのですが、一言でまとめると、【自分で触るときは関係無くて、男に触られるときには関係有る】ということですね」

 そう前置きして話しだした夏樹の解説を要約すると、次のような内容になる。

 おっぱいを構成する要素はふたつあり、ひとつは乳首であり、もうひとつは乳房である。乳首と胸の大きさは関係なく、ちっぱいにもでかぱいにも、乳首は存在する。

 よって当たり前であるが、乳房の大きさこそが、ちっぱいかでかぱいかを区別する最大の要素となるのだが、実は女性のおっぱいで最も感じる部分というのは、乳房ではなく乳首なのだという。

 つまりおっぱいの大小に関係の無い乳首こそが最も感じる部分であるのだから、女性が自分自身でおっぱいの最も感じる部分を刺激する場合には、必然的に乳首を刺激することになるので、ちっぱいもでかぱいも感度は同じということになる。

 しかし男性が女性のおっぱいを触るとなると、途端におっぱいの大きさが事を左右するようになってくる。

 まずは男性が女性のでかぱいを触る場合、どうしても男は大きく目立つ乳房を中心に触ろうとしてきて、最も感じるはずの乳首へのタッチは少なめになってしまう。

 逆に男性が女性のちっぱいを触る場合、小さな乳房よりも目立つ乳首のほうを愛撫することになり、結果的に最も感じる部分へのタッチが多くなるということになる。

というわけでちっぱいの女の子のほうが感度が良いという都市伝説が生まれることになるのだが、夏樹の主張によれば、『男が触る。男に触られる。それらを前提にして考えれば、貧乳、ちっぱいこそ最強にして正義っ!』ということになるのだという。

「なんだか身も蓋もない知識を聞いたような……」

 美姫はそう言って呆れる一方、早苗はというと、『よし。じゃあ恋人にするには、チクビスキーな男の子を選べばいいのね♪』などと思ってたり。なかなかに元男であった美姫と、もともと女の子な早苗の感想の違いというのも面白かったりして。



 さて、そんな余談だらけな雑談をしつつも宇宙船うみねこ2世号は妖精世界から召喚された地球を東から西へと進みほぼ一周半して、日本列島と同じ形、同じ地形をした秋津島列島を眼下に確認することが出来た。

 そして、『さあ後は降下するばかり』と思ったとき、それは発生した。

「あっ、見てっ! 大陸のほうに閃光がっ!!」

 叫ぶ美姫。操縦席から文字通り飛び上がり、背中の羽をパタパタさせつつ、前方を指差す。

「ふむ、立ち上るキノコ雲。どう見ても核爆発ですね」

 仕様通り、メガネをキラリンとさせる江梨子。既に納得するまで珠美香の胸を触りまくったのか、その手は疲れているらしい。キラリンとさせたメガネをクイッと上げる手が微妙に震えている。

「さて、秋津島皇国との交渉には苦労するかもしれないな。詩衣那君、サポートよろしくお願いできるかな?」

「もちろんです。道彦さん」

 主に交渉に当たる予定の剣持主任と詩衣那さんは、お互いを見つめてため息をつく。

 そしてそうしている間にも、宇宙船うみねこ2世号は、操縦を替わった美姫により、秋津島皇国の国土の中心部分にある皇都天那こうとアマナへと降下していくのだった。


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