第二地球圏物語 前史
It is historical in front of The second Earth area story
妖精的日常生活 お兄ちゃんはフェアリーガール
作:紅衣北人 / ジャージレッド
第32話 ふたつの地球の境界線にて
「おお、さすがにモニター越しに見るのと、実際に自分の目で見るのとでは大違いだな」
加賀重工航空機制作所開発部新技術研究班の剣持道彦主任は感動のあまり、溜息をついていた。
剣持主任が眺める窓の外には、遠ざかりつつある地球が見えているのだが、それが溜息の原因だろう。今、剣持主任は、フェアリードライブ搭載の新型宇宙船、うみねこ2世号の中にいたのだ。
「へっへーんっ! すごいでしょ」
自分の成果でもなんでもないのに得意そうに答えるのは、体に密着するような生地で作られた白い宇宙服に身を包んだ妖精少女、長谷川美姫である。
前回に美姫たちが月までの宇宙旅行をした時には、宇宙服に見えるけど、見えるだけで本当は宇宙服ではない【なんちゃらスーツ】に見せかけただけの服を着ていたのだが、今回は違う。ちゃんと実際に機能する本物の宇宙服なのだ。
もっとも各個人に個別に用意されたものではなく、比較的近い将来においてフェアリードライブを搭載した宇宙船を使って地球軌道上に有人宇宙ステーションを建設する為に開発されているものを拝借してきているので、どの妖精でも使えるようにと汎用サイズで作られたものだったりする。
もちろん男女の違いや、若干の身長差によるサイズの別などはあるものの、あくまでも誰にでも使える汎用品であり、美姫本人の為に特注したものではない。
つまり何が言いたいかというと、数日前までの貧乳妖精少女のままの美姫では宇宙服の胸の辺りが余って『ぶかぶか』だったであろうが、誰もが皆、豊かな胸をしている普通の妖精たちよりも更に胸が大きな爆乳妖精少女になってしまった美姫にしてみたら、宇宙服の胸の辺りは『きつきつ』で『きゅうきゅう』なのである。
というわけで「えへんっ!」と胸を張る美姫のおっぱいは、必要以上に自己主張をしていたのであった。おそらく体とおっぱいの比率でいうなら、おっぱい最終兵器である大島早苗にやや劣るという程度の巨乳妖精少女となっているのが、今の美姫なのだ。
まあ、その、大島早苗のFカップに劣るEカップということだ。うむ、どうでもEいー話である。
ところで長谷川家の長男であった幹也が、妖精少女と化してから既に軽くもうすぐ二年になろうとしている。既に自分の性別が女性であるということに慣れて久しいのだが、そうすると女性としてのコンプレックスも感じるようになってくる。しかしそのコンプレックスは今は逆転した……。
つまりは、先日までの妖精の女性としては異常に貧乳な自分に対して引け目を感じていたのだが、それが爆乳となったことで感情が逆転し、今では豊乳が標準である妖精の中でも更に大きなおっぱいを持つことが出来たということに対して嬉しくてしょうがなくて、誰彼構わず見せびらかしたいという気持ちになっていたのだ。
……とどのつまりは痴女というか、なんというか、まあ、そういったものである。
現に痴女である証拠(?)として昨晩の美姫は大きくなったおっぱいが嬉しくて、布団の中でもみもみとしているうちになぜかくちゅくちゅとなって、最後には『あうううっ!』となって、たいそうお楽しみだったそうだ。
まったく一緒の布団で寝ていたまだ5才の結菜に気がつかれなかったのだろうか? 他人事ながら心配になってくる。
最近では美姫も、自分の秘密の花園に男の妖精のナニを挿れたらどうなるんだろうといった興味が湧いてきて、どうしようもなくアソコがむずむずしてくるらしい。二年近くも妖精少女をしていると、人間の男だった時の肉体感覚も忘れて正確には思い出せなくなってきており、男の裸や筋肉に対して性的興奮を覚えたり欲情したりするということだから、まことに肉体が精神におよぼす影響力たるや凄まじいものがあるということである。
さて、話を戻して、美姫が「へっへーんっ!」と、そのおっぱいを皆に見せつけている一方で、美姫のおっぱいには目もくれず、剣持主任の横に飛びながら窓の外の地球を見つめる蝶羽の妖精がいた。加賀詩衣那である。
もちろん剣持主任も詩衣那も、そしてその他のみんなも、しっかりと宇宙服を着ていたりする。つまりはまあ、体のラインがだいたいわかるということで想像してほしい。
そして詩衣那は背中から生えている実体のある蝶羽を宇宙服の内部に収め、光そのもので出来たホログラムのような蝶の羽を羽ばたかせて飛んでいた。実際に物理的に羽ばたいているのではなく、魔法で飛んでいるので、そのようなことになっている。
「このすばらしい景色をこれから先は誰でも簡単に見ることが出来るようにしなくてはなりませんね」
窓から見える地球に視線を向けたまま、詩衣那がつぶやく。
「まったくだ。僕たちだけでこの景色を独り占めしているのはもったいない」
どことなくいい雰囲気の剣持主任と詩衣那さんである。人間と妖精という種族が違うカップルであるが、さすがに元恋人同士だったというのもうなづける雰囲気の甘さである。
ところで滝沢海斗と山本夏樹の妖精男子チームが操縦席に座っているのはいいとして、なぜ宇宙船うみねこ2世号の中に、いつもは地上に居るはずの剣持主任と詩衣那が居るのだろうか?
それどころか美姫の隣では、現在は美姫のことを【(おっぱいが)おおきいお母さん】と慕う老田結菜と、結菜の召喚獣(?)であるドラゴンバタフライのピイちゃんがいた。更には、大島早苗や水城江梨子、そして佐藤雄高までが乗船しているのだ。
それを説明するには今朝まで話を遡る必要がある。
「珠美香ちゃん、昨日、一晩、考えたんだけど……」
「なに? 雄高君」
加賀重工航空機制作所開発部新技術研究班、通称【魔法研究所】にて、佐藤雄高は珠美香に話しかけていた。
今の珠美香の格好は、目に見えてたくさんの縫い目で覆われている白い宇宙服である。
内部に繊維が入っていて内側からの圧力に対して強化されているゴムホースと同じで、縦横無尽に走る繊維が宇宙服内部からの圧力に対抗しているという作りになっている。その為に内部の圧力でパンパンに膨れ上がってしまうような従来の宇宙服とは違って、可能な限りスキンタイトな宇宙服となっている。
「今の地球は、妖精たちの地球と月を召喚してしまったことで、本来なら巨大地震や津波とか火山噴火とかの天変地異が連続して起こっても不思議じゃないんだよね。そしてそれを白竜王吹雪のお爺さんの魔法で押さえつけているっていうことだよね」
「……たしか、そう聞いてるけど」
雄高の話の先がどのような結論になるのかが予想出来ないまま、珠美香はあいまいに返事をする。
「昨日の吹雪のお爺さんからの話だと、そのお爺さんの魔力が切れそうだから、魔力を補充する為に『うまい食い物とうまい酒』が欲しいということだったよね」
そこで一旦雄高は言葉を閉ざすと、何やら言いたいことがあるんだけど、どうしようか迷っているという感じで、視線をさまよわせた。
さまよわせた視線がチラリと珠美香の体を横切る。『股間に何もなくてスッキリしているのはともかくとして、胸もほぼ平らでスッキリしているなあ、……だが、それが良いっ!』などと思っているのはご愛嬌のうちである。
「僕のマッサージの腕が、お爺さんの魔力回復の役に立てられないかな?」
というわけで雄高は珠美香に対して、自分も珠美香たちに付いて宇宙船に乗って白竜王吹雪のところまで行きたい。ひいては妖精たちの地球にも行ってみたいという希望を話したのだった。
雄高は、そのマッサージの腕故に、指圧マスターとも、ゴッドフィンガーとも呼ばれる存在となっている。クラスメイトはもちろんのこと、学校中の肩凝りさんが男女を問わず雄高の元を訪れるまでになっているのだからすごい。
しかも対価としての金銭を一切要求しないという欲のなさが、更に雄高の評価を上げているのだ。
……もっとも雄高の心の内は、クラスメイトを初めとして、それこそ学校中の肩凝りな女子高生の肉体を触り放題ということで、既に対価は頂いているという認識なだけではあるのだが、まあ、あえて言う必要も無い。当初はチョイ役の三枚目キャラのはずだったのに、雄高の名声は高まるばかりなのだ。
まことにうらやまけしからん限りである。
さて、というわけで、雄高の提案は珠美香から剣持主任に伝えらることになる。そこで当の白竜王吹雪が雄高のマッサージの腕をかなり高評価していたという事実があったので、今回は雄高にも同行してもらおうということになった。
なにせ、白竜王吹雪の魔力を早急に回復させないと、地球上が天変地異のバーゲンセールという状態になってしまうらしいということで、多少のリスクには目をつぶろうということになったのだ。
雄高の両親も、加賀重工という巨大企業から連絡を受けると、最初は渋っていたものの、結局はOKということになった。
しかしそうなると黙っていられないのが水城江梨子であった。仕様通りにキラリンとメガネを光らせつつ、こう言ったのだ。
「雄高君も宇宙に行くというのなら、私も行きたいですわね。白竜王吹雪のお爺さんが魔力を回復するには、『うまい食い物とうまい酒』が必要なんですよね。酒宴の席には綺麗所きれいどころの存在が必須だと思うのですが、いかがでしょう? 私と早苗のふたりなら、必要かつ十分かと思いますが?」
「えっ? 私もなの?」
江梨子に巻き込まれた早苗は目をぱちくりさせる。と、ついでにFカップな超巨乳をぷるんぷるんブルブルと揺らすのも、また仕様である。お約束は大事なのだ。
「当たり前でしょ。珠美香ちゃんも美姫お姉さまも、それどころか雄高君まで行くんだから、私たちが行かないという法はないでしょう?」
行くことが当然とばかりの主張をする江梨子。その行先が宇宙だろうと、異世界から召喚された平行世界の地球だとしても関係ない。いや、だからこそ、そいういう主張になるのだろう。江梨子としては、未知なるものを見たり知ったり体験したりということに対しての興味が半端ないのだ。……もちろん仕様である。メガネキラリンだけが仕様ではないのだ。
「でも、宇宙でしょ。危なくない?」
早苗の懸念ももっともだ。というかそれが普通の一般人の反応であろう。
「……妖精世界の地球。妖精たちが住む都市って、どんなところでしょうね。すべてが妖精サイズってことは、きっと童話の世界のようにかわいらしい光景が広がっているんでしょうねえ。……見てみたいと思わない?」
というわけで江梨子のその言葉で早苗は落ちた。かわいいもの大好きという設定もまた仕様であった。みんな、忘れてたかもしれないけど。
そこで江梨子と早苗から相談を持ち掛けられた剣持主任は加賀重工会長の加賀光政と相談し、『長谷川美姫に珠美香を守る為には、この際、しがらみは多ければ多いほうが良い』という謎の結論を出すに至り、ふたりの同行を許可することになった。
そして雄高も江梨子も早苗まで行くとなったら、『結菜も行くーっ! ついでにピイちゃんも』ということになり、結局のところ美姫や珠美香の【私的な】関係者勢ぞろいということになってしまったのだ。
まあ、こういう展開をご都合主義というのである。よく覚えておいてほしい。ちなみに作者のこういった態度を【開き直り】という。うむ、勉強になりましたね。
さて、話を戻すが、加賀詩衣那は加賀重工会長の加賀光政の名代みょうだいとして秋津島皇国のディアナ女皇と交渉する為に宇宙船に搭乗しているのだが、、剣持道彦は、詩衣那のサポートということで同行しているということになっている。
はて、それではいったい地上でのサポートは誰が行っているのだろうか? そこはそれ、今までも今後も名前は出てこないのだが、加賀重工航空機製作所開発部新技術研究班における剣持主任の部下たちと、美姫や海斗に夏樹以外の妖精の協力者たちが、サポートを行っているのである。
なにはともあれ歴史というものは、そういった無名の人々たちによってこそ紡がれていくものなのだ。……ということにしておこう。
「地上側との通信状況のテスト終了。問題ありませんっ!」
貧乳好き、むしろ貧乳命な妖精少年の山本夏樹が、なぜかハイテンションで報告をした。美姫が貧乳妖精少女から、爆乳妖精少女になってしまって以来ずっと落ち込んでいたはずなのに、これはどうしたことなのだろうか?
実は、夏樹のあまりの落ち込み様を不憫ふびんに思った滝沢海斗が、出発前の最後の連絡ということで、昨晩アヒカルと例によって夢幻界を通じての会話を持った際の内容を知ったからだったりする。それは下記のような会話だったそうだ。
「……というわけで、アヒカルさん。人間世界側としては機械たちに対しての核攻撃をこれ以上行わないでいて欲しいのですが、いかがでしょう?」
海斗は、無差別的に核攻撃を行っているように見える妖精たちを人間側が大々的に支援するのは難しいという事情を説明したのだが、アヒカルからの返事は色よいものではなかった。
「申し訳ないですが、それについては拒否させていただきます。機械たちがいつまでキャンセラーのコピー品を使い続けるのか不明ですから、攻撃可能な時にできる限りのダメージを機械たちに与えておきたいというのが、秋津島皇国としての意思ですから」
アヒカルは申し訳ないと言いつつも、さすがに元近衛騎士という名の軍人であっただけのことはあり、身重の体からは想像がつかないようなキリッとした表情で、海斗が伝える人間世界側というか、加賀重工側からの要望を完璧に拒否したのだった。
「そうですか、無理ですか……」
「ええ、無理ですね」
取り付く島もないという雰囲気がふたりの精神が作り出す夢幻界に満ちてしまう。
「……ああ、その、話はガラッと変わりますけど、ちょっと聞きたいことがあるんですがいいですか?」
重苦しい雰囲気を変えたいと思った海斗が、ふと思い付いた話題が山本夏樹の性癖の件だった。
「はて、なんでしょうか。答えられることなら答えたいと思いますが」
海斗が軽い話題で雰囲気を変え、また先程の核攻撃の件を持ち出してくるのではないかと、アヒカルは警戒の色を隠さない。まあ、当然であろう。
「妖精の女性は皆、大きな胸をしていますが、スレンダーというか胸が薄いというか、おっぱいが小さいというか、いわゆる貧乳な方はいないのですか?」
「えっ、いったいどうしてそんな質問が出てくるんですか?」
アヒカルは核攻撃の中止要請の話題の後に出てきた話題がそのようなものだったので完全に面食らってしまい、緊張した雰囲気が霧散してしまった。現に機械たちの侵略を受けている妖精たちと、まがりなりにも平和に暮らしている人間たちの意識の差が出てきたという感じなのかもしれない。
ともかく海斗は夏樹のかつての美姫のような貧乳しか愛せないという性癖と、今の美姫は貧乳から爆乳へと変化してしまい夏樹の恋愛対象から外れてしまったこと。そして豊乳な女性しかいない妖精たちの中には夏樹の恋愛対象とできる女性が誰一人としていないという現実に、夏樹が非常に落ち込んでいるという事実を説明したのだった。
「なるほど、そういう事情が……」
「すみません。下世話な話で……」
重苦しい雰囲気は消えたものの、代わりに微妙な雰囲気が漂う。まあ、この話もこれでおしまいかと思った海斗だったが、先ほどから考え込んでいたアヒカルが何かを思い出すように右手の指先を額に当てながら、人間世界側としては初めて接する情報を語りだした。
「確かに妖精の女性たちは皆が皆、全員が豊乳の持ち主ですが、まったく例外がいないというわけではありませんよ。まあ、私も話だけで見たことは一度も無いんですけど」
そして語られた内容は、かつて妖精世界の人間たちが妖精という生き物を作った当初の開発秘話というべき内容の伝説であった。
「じゃあ、妖精の女性たちも昔は豊乳から貧乳までいろいろそろっていたというんですか?」
「ええ、そうです。しかし妖精の魔力と胸の大きさに明らかな相関関係があることが分かった後は、妖精の魔力を高めるという目的の為に、より大きな胸の妖精たちばかりが作られていったという伝説があります」
「そうですか。でも、つまり、貧乳の妖精も【昔はいた】ということで、今はいないんですよね」
海斗は、この話を夏樹に伝えたら、より絶望させることになるなと思ったのだが、アヒカルの話にはまだ続きがあった。
「確かに【今はいない】ということになっていますが、ごくまれに先祖返りとでもいうんでしょうか、貧乳の妖精が生まれることもあると聞きます。しかしそういった貧乳の妖精は胸が成長しないことが分かった段階で姿を消して、なんでもどこかの山中の村でひっそりと貧乳の妖精たちだけで暮らしているという話もありますけど、言ってみれば都市伝説の類ですよ」
「貧乳の妖精だけが住む村……。ということはそこに妖精の男性は……」
「そのへんは不明です。女性だけだと人口が維持できませんから、もしかすると男性もいるかもしれません。でもまあ、あくまでも都市伝説で、信憑性は限りなく薄いですよ」
とまあ、そういう話を海斗から聞いた夏樹は、一時の落ち込み様が嘘のように復活したのであった。
「ふははははっ! 待っていてください。まだ見ぬ、貧乳の妖精美女さんたちっ!! あなたの山本夏樹が今、行きますよっ!」
テンションが高くなっている夏樹を、うみねこ2世号に搭乗している他のメンバーは、生暖かい目で見ている。都市伝説を信じてそこまでハイテンションになれるなんて、めでてえなと。
しかし後日、夏樹は実際に秋津島皇国の山中奥深くにひっそりと存在した貧乳妖精たちの村を発見し、そこの住人たちほぼすべてとそういった関係を持ち、生涯にわたって100人近くの子供を授かったということになるのであるが、まあそれは別の話である。
まことに虚仮の一念岩をも通すとは、このことであろう。
さて、それはそれとして現在の夏樹ははたからみていても気持ちが悪い感じなのだが、幼児は遠慮がないから思ったことをすぐ口にする。
「おっきいお母さん、なんだか夏樹お兄ちゃんが怖い」
妖精の幼児用の宇宙服に身を包んだ結菜が、宇宙服がはちきれそうになっている美喜の大きなおっぱいに顔をうずめながら、ぷるぷると震えるふりをする。『怖い』というのは口実で、ただ単に美姫に甘えたいだけなのだろう。口調も棒読みというか、むしろ嬉しそうだ。
「危ないから、夏樹お兄ちゃんに近付いちゃダメですよぉ~」
美喜もまんざらでもないのか、その爆乳なおっぱいをむにむにと押し付けるようにしながら結菜の頭を抱きしめる。結菜も『おっきお母さん、くるしいよ~♪』なんて言っているが、やっぱり嬉しそうだ。まったく何をしていることやら。
「……白竜王吹雪さんの龍体から発せられていると思われる光点を視認しました。距離、およそ100万kmの宙域までフェアリードライブ低速にて飛行します」
海斗は、あくまでも真面目な口調で報告をする。以前に月まで行った時とは違い、目的地の大きさが段違いに小さい。だから以前に記録した光速度の0.3%という高速ではなく、その3分の1、光速度の0.1%という低速(?)にて飛行を開始した。
航法システムによる飛行ではなく、パイロットである妖精の視認により飛行している関係上、小さすぎる目的地に高速で飛行するのは難しいのだ。減速のタイミングを逃して通り過ぎてしまう危険性があるにはある。
まあ、ロケットによる慣性飛行ではないので、通り過ぎてしまっても簡単に引き返せるというのがフェアリードライブの良いところではあるのだが、どうしても今までの常識が邪魔をしてしまい、新技術のスペックを完全に出すことができないというやつだろう。
ちなみに以前はフェアリードライブにて飛行するパイロット役と、磁場および重力場を召喚して宇宙線や隕石等に対するバリアとする役割が分割されていたのだが、魔法の制御に習熟してきた海斗は、今では一人でその役割をこなすことができるようになってきている。もちろん美姫も海斗と同じことができる。
一方の夏樹は、例によって地上側と無線通信を維持する役割として極小の召喚ゲートを常時展開している。これはこれで制御が難しいのだが、効果はともかく、いかんせん地味すぎる魔法の使い方だ。
……というわけで現時点で交代要員として待機している役割しかしていない美姫は、はっきり言ってすることがない。思う存分その爆乳なおっぱいを使って、結菜とキャッキャうふふとしていても、まったく問題がないのであった。
「まるで、SF映画の映像みたいだな」
搭乗者全員の思いを代弁する形で、剣持主任が改めて外の光景を見ながら感想を口にする。確かに非現実的な光景ではある。
後方の窓の外から見えていた地球がみるみると小さくなり、そして前方に浮かぶ妖精世界の地球が徐々に大きくなり、ふたつの地球がちょうど同じような大きさに見えるようになるまで一時間もかからなかった。
そしてふたつの地球の境界線の宙域には、白銀に輝く長い龍体を丸めた白竜王吹雪が浮かんでいたのであった。
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