第二地球圏物語 前史
It is historical in front of The second Earth area story
妖精的日常生活 お兄ちゃんはフェアリーガール
作:紅衣北人 / ジャージレッド
第16話 夏は水泳、夜のお泊りも良し (中編)
美姫たちは電車や船を乗り継いで愛知県は三川湾に浮かぶ漁業と観光の島、日間賀島に到着した。そして島の西側にある春風荘に到着すると、そこに待っていたのは春風蘭華と、男の娘妖精の山本夏樹、そして同じく島の出身者で夏樹とは寮の同室の香山由美だった。
「この前はごめんなさい。私のせいで、なんだか大変な目に遭ったみたいで」
手を合わせてお辞儀をするのは、春風蘭華である。まだ高校3年生なのであくまでも候補であるのだが、春風荘の若女将である。
「いえいえ大丈夫ですよ。確かに大変な目に遭いましたけど、結果的にこの子を助けることもできましたし」
とりあえず美姫は結菜や海斗や雄高といった、前回のデート時にはいなかったメンバーを、島側の3人に紹介する。
「結菜ちゃんか。なんだかえらく保護欲をかきたてられる子だね」
結菜を見た途端に、どこかそわそわしていた夏樹だったが、今は結菜の頭をぐりぐりを撫でまわしている。
「俺も、結菜から『お父さん』って呼ばれると、とろけそうなほどうれしくなってくるんだけど、そういえばなんでなんだろう……」
と、最近は男言葉も板についてきた海斗が、改めて不思議に思ったのか、首をかしげている。
「あ、私も、私もっ! 結菜が『お母さん』って言うと、ああ、もうダメ。結菜の為に何でもしてあげなくちゃっ!! って、思うんだけど、なんでかな?」
「お兄ちゃん、『お母さん』じゃなくて、『ちいさいお母さん』でしょ。結菜ちゃんの発言をねつ造しちゃダメだよ」
お母さんにかかる『ちいさい』は、『おっぱいが小さい』という意味だと知っている珠美香は、笑いをこらえながらもこらえきれず、ニヤニヤしながら指摘する。
「そうっ! ちいさいお母さんなのっ! ちいさいお母さん大好きっ!」
タイミング良く、結菜がそう言いながら美姫に抱き付く。わざとなのかピンポイントで美姫の小さくて薄くてささやかな胸に顔をうずめる。うずめきれないけど。
「うーん、なんでこんな気持ちになるのか分からないけど、結菜ちゃんかわいいからいいか」
美姫は悩むのをやめて飛びついてきた結菜を抱きしめる。そのままふたりは空中でじゃれ合うようにクルクルと回りながら飛んでいる。それを見るな周りのみんなも、どこかほっこりしたような気持ちになってくる。
さて、ところでなぜ結菜を見たり、その言葉を聞いていると母性本能的な気持ちが刺激されるのだろうか? 実はこれも魔法なのである。
動物の中でも哺乳類は、小さな子供の頃は親の庇護が無くては成長することができない。というわけで庇護欲をかきたてられるようなかわいい容姿をしている。小さなうちは目や鼻などの顔のパーツが顔の下半分に集中しているというのもそれだと言われている。
そして妖精もまた、ちいさな赤ん坊や子供のうちは無意識のうちに自らを保護してもらえるような魔法を使っているのである。ちなみに結菜は召喚されて妖精になった元人間の妖精ではない。この世界で生まれた生粋の妖精である。
さて、妖精が使う魔法は基本的に召喚魔法のみと考えて間違いが無いのだが、ファンタジーの世界でいうところの魅了チャーム系の魔法もまた召喚魔法である。但し、嫌いな者を好きにさせるというほどのパワーがある魔法ではない。
単に、かわいいものをよりかわいらしく感じさせたり、愛らしいものをより愛らしく、保護したいと思えるものをより保護したいと思えるようにする程度の魔法である。
さて、その魔法の正体であるが、自分の声を聞いたり姿を見た相手の脳内に、愛情物質とも呼ばれる脳内ホルモンであるオキシトンを召喚するものである。
母性本能を高めると言われている神経伝達物質であるオキシトンとは、女性だけに分泌されるホルモンではない。男性にもちゃんと分泌されているホルモンである。但し、出産や授乳の際に、特別多くのオキシトンが分泌されるというだけに過ぎない。
妖精の赤ちゃんや小さな子供は、無意識のうちにこのオキシトンと呼ばれる物質、もしくはそれに類する物質を、周りの妖精の脳内に召喚することにより、相手の母性本能を刺激し、自分の生存確率が少しでも上がるようにしているというわけである。
ちなみに結菜の場合、既に一般の妖精の子供であればこのような無意識で発動することができる魅了チャーム魔法のパワーも減衰してくる年齢であるのだが、なぜかパワーMaxで使えてしまうところに結菜の特異性がある。まあ、個体差というところであると理解すればよい。
そんなわけで美姫は結菜にメロメロで、結菜の為にお母さんしようという気持ちが一杯なので、いまだに女の子女の子した態度というか、お母さんらしい言動をとろうという意識が働いているという次第なのだ。
「まずはお部屋のほうに案内します」
さて、結菜を巡る一連の会話等がひと段落したのを見た春風蘭華は、若女将らしい落ち着いた雰囲気を作って、美姫たち一行に一礼する。
「部屋について落ち着いたら、水着に着替えて出てきてね。先週、海開きしたばかりだけど、今日は天気も良いし、気持ちよく泳げるわよ」
「僕たちが案内するから、楽しみにしててね」
部屋へと案内される美姫たちに対して、由美と夏樹から声がかけられる。一行はロビーで待つふたりに笑顔で手を振りながら、男女それぞれ別々の部屋へと向かって行った。
とは言ってもさほど大きくはない旅館である。というかはっきり言ってこじんまりしている。ロビー横の階段で3階まで上がると、そこが最上階である。
「この階には2つの部屋があります。廊下を挟んで向かいは大浴場になっていまして、男湯、女湯、それぞれに露天風呂がついています。ご夕食は18時からご用意できますが、何時からになさいますか?」
「では、18時からでお願いします。で、いいわよね?」
なぜか江梨子ちゃんが仕切っているのだが、なんとなくそれでいいと思ったのか、皆もただうなずいているばかりだ。
「かしこまりました。それでは皆様、ごゆっくりしてください」
と、言った蘭華は、しばらく頭を下げていたのだが、ぷはーっと、息を吐き、若女将モードを解除する。
「こういう喋り方って疲れるから嫌いなのよ。じゃ、私たちも水着に着替えて待っているから、なるべく早く来てね。ふふふ」
にやりと笑う蘭華の目は、雄高と珠美香のふたりを見ていたのだが、どんな目で見ていたというと、高尚な趣味を持つ方々の目であったとだけ言っておこう。
「さてと、じゃあ301号室が女子部屋、302号室が男子部屋ということでいいかしら?」
「部屋の造りは同じみたいだし、いいんじゃない」
江梨子の確認に対して雄高が答える。
「じゃ、男子女子別れて、ちゃっちゃと水着に着替えちゃいましょう!」
……そしてお着換えタイムが始まる。
「ほえーっ! すごい、すごいとは思っていたけど、本当にすごいんだね」
美姫は何に感心しているのかと言うと、早苗のおっぱいに関してであった。美姫という元男子という妖精が混ざっているとはいえ、女子しかいない301号室において、女の子たちは開放的であった。水着に着替えるのに、少しも隠すことは無く、それはもうある意味男らしくすぽーんっと衣服を脱いでいる。
早苗のおっぱいは大きい。どれくらい大きいかと言うと、それはもうフィクションの世界でしかありえないのではないかと思えるくらい大きい。DとかEとかじゃ追い付かなくて、Fとかでやっと何とかなるという、それこそファンタジーである。
しかも驚くべきは大きさだけではない。その柔らかさこそ早苗のおっぱいの真髄なのだっ!
「うわーっ! お姉ちゃんのおっぱい、おっきーいっ!!」
妖精からしてみたら人間自体が大きいので、おっぱいも大きい。しかしそんな意味で言っているのではないということは分かりきっている。
「ふかふかだーっ!」
結菜がぱたぱたと飛んで早苗のおっぱいめがけてダイビングした。おっぱいの上部に着地した結菜は、その乳肉の上でぽよんぽよんとはしゃいでいる。
「ちょ、結菜ちゃん。くすぐったい。くすぐったいからやめて、あっ、うっ、ダメだから~っ!!」
くすぐったいのではなく、感じているのではないだろうか? 身をよじる早苗の様子を見る美姫と江梨子はそう思ったのだが、助ける気は全くないのは言うまでもない。江梨子はもちろん、美姫も最近は自分のおっぱいが小さいということに対してコンプレックスを持ち始めたので、ふたりとも、ただ、嫉妬あるのみである。
「早苗ちゃ~ん、子供がやっていることだから許してやってね♪」
「ほらもう、早苗ったら遊んでないで早く着替えてよね。みんなが待っているんだから」
「美姫お姉さんも江梨子ちゃんもひどい」
そんな会話がなされつつ、粛々と着替えが進んでいく。
「ところで美姫お姉さま、1年前までは元男性でしたのに、私たちの裸を見ても何も感じないのですね」
あまりにも粛々と、あまりにも冷静に着替えている美姫を見て、江梨子が疑問を口にする。
「うーん、『うわーっ! 早苗ちゃんのおっぱいすごいっ! 江梨子ちゃんのもいい形っ!』とかは思っているよ。ただ、反応するものが付いてないからね。冷静でいられるのはそのせいだろうね」
「よく男の人の人格は下半身に支配されているって言いますけど、それって本当のことなんですね」
「江梨子ちゃんってば、耳年増だったんだ」
何気に早苗が江梨子に対して逆襲していたり。
「なんていうかな。ちょっと生々しい話してもいい? 女子高生だったらもうだいじょうぶだと思うんだけど?」
「バッチこいです。美姫お姉さま」
江梨子は早苗の頭に軽くげんこつを当てながら返事をする。ちなみにその間にも着替えは進み、結菜を除いた3人は水着に着替え終わっている。
江梨子は鮮やかな水色に南国風な花柄のワンピース型の水着。早苗は真っ赤なビキニ。そして美姫はというと、腰の部分にスカートが付いた黄色のワンピース型の水着で、ひまわりがプリントされている。
「今は妖精の女の子になっているから、だからこそ分かるんだけど、男っていうのはね……」
美姫は結菜の着替えを手伝いながら江梨子と早苗のふたりの顔を交互に改めて見ると、言葉を続けた。
「本当にムラムラときたら、出さないでおくことはできない生き物なんだよ。健康な男なら日々、子種は作られ続けるからね。ある意味、アレを出すのは避けられない排泄行為といってもいいね。今なら実感できるよ。男って下半身に思考を支配された悲しい生き物だってことを」
しみじみと美姫は述懐する。
「妖精だけど、女の子になって良かったことのひとつがそれだね。なんていうかな。思考が下半身から解放されたっていうのかな」
「でも美姫お姉さん、女の子にだって性欲はありますよ」
身も蓋もない早苗であった。女子ばかりということで、顔を赤らめることすらせず、ストレートな物言いだ。
「早苗ちゃん、私も女になって1年以上経つから、女の性欲を経験したことはあるし、その処理だってしたことはあるんだけど、男の性欲のすごさって半端ないから。女と違って我慢しようと思ってもできないのが男の性欲だから」
何気にひとりエッチの経験があることを暴露している美姫だった。
その間にも結菜も水着に着替え終わったのだが、ピンク色のワンピース型だ。ちなみに美姫のと同じで腰にスカートが付いている。やはり幼児体型には似合うデザインなのだろう。
「ふーむ、するとあれですか。男になった今の珠美香さんは、ものすごく下半身に支配されているということですよね。もちろん元から男の雄高君も」
「珠美香ちゃんが好きな相手は演劇部の杉野先輩だってことだから、恋愛の対象は男でしょ。そして珠美香ちゃんは可愛い男の娘♪ さーて、雄高君はどうするのかな。ちょっと興味が津々でワクテカなんだけど、美姫お姉さんはどう思います?」
「えっ!? もしかして珠美香と雄高君って、そういう関係になる可能性があるってこと!?」
「美姫お姉さま、自分が男のままだと仮定して、珠美香さんのように女の子に間違えられそうなほどかわいい男の娘を目の前にして、下半身が反応しないという自信はありますか?」
ふふふっと笑いながら、例によってキラリンとメガネのレンズを光らせる江梨子ちゃん。何度も言うが仕様である。
「うーん、なんだかお姉ちゃん、心配になってきちゃったよ。でもちょっとだけ見てみたいかも……」
「ちいさいお母さん、みんな何の話をしてるの?」
腐っていないのは、結菜だけであった。
さて、そのころの男子部屋、302号室では、隣の部屋での会話がそのようなことになっているとはつゆ知らず、それなりに、それなりな着替えが行われていた。
「うわーっ! 雄高君、ものすごく筋肉質なんだね」
珠美香は、上半身裸になった雄高の筋肉に目を奪われた。あまりにも自分の体との違いが大きかったからだ。
以前、佐藤家にお泊りしたときに雄高と一緒に風呂に入ったことはあったのだが、その時は初めてということもあるし、湯気や石鹸の泡とかが邪魔をして、なんとなくじっくりと雄高の裸を見ることができなかったので、ある意味、日の光の中で見る雄高の裸の上半身は新鮮であった。
「本当にすごいですね。俺も男になって自分の体が筋肉質になったとは思ってましたけど、佐藤君には負けますね」
既に短パン型の水着に着替えている海斗は、コウモリ羽を羽ばたかせながら雄高の周囲をぐるりと回りながら飛んでいた。男の着替えは素早いのだ。
「そりゃあ鍛えてるからな。毎日のトレーニングは欠かしたことがないし」
自慢したい年頃でもあり、雄高は見よう見まねの怪しげなポージングを取った。普段は衣服に隠れているために気づかれにくいのだが、雄高の体は、引き締まった筋肉で覆われていて、まるで彫刻のようという形容詞がぴったりくるようだった。
「やっぱりトレーニングしてるんだ。……私もしたほうがいいのかな?」
珠美香は自分の体を見ながらそう言った。客観的に見て、珠美香の体は白くてぷにぷにしている。筋肉などこれっぽっちも無いように見える。
「いや、珠美香ちゃんはそう見えないだけで、けっこう筋肉あるよ」
「え、うそ!? 私に筋肉が?」
「へえ、そうなんですか。そうは見えないですけど、どうしてそう思うんですか? 佐藤君」
驚く珠美香と、不思議がる海斗は、雄高に説明しろと視線で訴えた。
「うーん、どうして珠美香ちゃんの体がそうなっているのかは分からないんだけど、珠美香ちゃんの体って、触ってみれば皮下脂肪の下はかなりしなやかな筋肉がついてるよ」
「ああ、そうか、雄高君、マッサージでけっこう私の体を触ってるから」
「うん、そう。だから分かる。ほら、こうやって押さえてみると筋肉の形が分かるでしょ?」
雄高は珠美香の腹部に指を当て、やや力を入れつつ、ススッと撫でるように動かした。
「一見するとお腹が滑らかで腹筋なんかなさそうなんだけど、ちゃんとお腹が割れてる感じがあるんだよね。普通ならここまで腹筋が割れていると皮下脂肪も薄くなって、外から見てもちゃんと分かるんだけど、珠美香ちゃんの場合はなぜか腹筋を隠すくらいの皮下脂肪がついてるんだよね」
そう言いつつも雄高の指は止まらず、珠美香の腹を撫で続けた。
「腹筋だけじゃなくて、足もそうなんだよね。見た感じ、珠美香ちゃんの足って、女の子みたいに脂肪で覆われていて滑らかなんだけど、触ってみるとやっぱり皮下脂肪の下はすごく筋肉が発達しているのがわかるんだ」
雄高は指だけではなく手のひらで珠美香の大腿部を撫でるように触り出す。ちなみに珠美香を含め、男子勢3人は既に海パンに着替え済みである。3人とも膝丈まであるサーフパンツだ。
「太ももの表側にある大腿四頭筋、裏側にある大腿二頭筋に半腱様筋、それからお尻にある大殿筋、見ただけではこれほど筋肉が発達しているってことが分からないほど皮下脂肪が覆っているね」
雄高は珠美香の太ももをさわさわと撫でたり、お尻をぐっと押したりしながら、解説を続ける。
「もちろん上半身もすごい。背中にある僧帽筋、首筋から肩にある肩甲挙筋も良く発達してる。それに力がなさそうに見えるこの腕も相当の筋肉がついてるね。上腕筋に上腕二頭筋、それから烏口腕筋に三角筋もいい感じだね」
珠美香の大腿部を触っていた雄高の手は、珠美香の体の表面を遠慮なく移動し、お尻から背中、そして肩から首筋を撫でるように押しながら、右腕を掴むとぐっと曲げた。
「ほら、こうして腕を曲げたやると見た感じは分からないかもしれないけど、ちゃんと力こぶができるでしょ。それにこの大胸筋も見事だね」
そして雄高の手は珠美香の胸へと到達した。
「ちょ、やだっ!」
たまらず珠美香は身をよじって雄高の手から逃げた。
「えっ?」
一瞬、何が起きたのか理解できなかったのが雄高である。珠美香の胸を触っていた手が空中で妙な具合になっている。
「ええと、佐藤君。珠美香さんと同じ、元人間の女性として言わせてもらいますと、着衣の上からならまだしも、肌が露出した状態の胸を撫でまわすように触るのは、ちょっと止めたほうがほうがいいんじゃないでしょうかね? まあ、現在は男同士だから、別に何かあるというわけではないでしょうが」
海斗は、やや言いにくそうにしながらも直接的な言い方をする。雄高のようなある意味、筋肉オタクには、婉曲的な言い方は通じないと思ったからだ。
「あ、ご、ごめん。珠美香ちゃん。変な気持ちで触ったんじゃないから。本当だから」
ようやく頭の理解が追い付いて来たのか、ちょっと焦った感じになる雄高。
「いい、分かってるから。……私もダメよね。今は男同士だから、胸を触り合っても何の問題も無いはずなのに、つい昔の感覚で逃げちゃった」
男同士ではあんまり胸の触り合いなんてしないんじゃないかな? と、思った雄高だったが、今それを言うのはまずい気がして、黙っていることにした。賢明である。
というわけで代わりにこんなことを言ってみちゃったりする。
「じゃ、じゃあ、俺の胸の筋肉も触ってみる?」
半ば冗談のつもりだったが、珠美香は乗って来た。
「え、いいの? じゃあちょっと失礼して」
そう言うなり今度は珠美香が雄高の胸というか体を触り出した。それはもう遠慮なしに。
「ふえ~っ! すごく硬いです。こっちこちです。ほぉお、雄高君って痩せて見えるのにマッチョなんですね。いわゆる細マッチョですねっ!!」
なぜかテンションが高くなる珠美香。もしかすると筋肉マニアだったのかもしれない。
「珠美香ちゃん、ちょっと、珠美香ちゃん!?」
他人の体を触るのには慣れている指圧マスターこと佐藤雄高。しかし自分が触られることには慣れていない。遠慮のなくなった珠美香の手が胸を撫で、腕を撫で、そして背中やお腹、そしてお尻から太ももへと移動するに従って、雄高は上ずった声を上げ出す。
「なにをやってるんですか、このふたりは?」
じゃれあっているようにしか見えなくなってきたふたりを見ながら、ひとり溜息をつく滝沢海斗であった。
「もう、遅いっ! たかが水着に着替えるだけでどれだけかかっているのよ」
「本当だよね。僕たちなんかもう着替えて、さらにはアイスまで食べ終わったところなのに」
香山由美は、競泳水着のようなデザインながら、派手な色彩の模様がついた水着に着替えている。まるで少女のような容姿の男の娘妖精の山本夏樹は、他の男性陣と同じくサーフパンツだが、上にTシャツを着ている。当然、背中にはスリットが開いており、そこから羽が伸びている。
「まあまあ、とりあえずみんな揃ったんだから、さっそく浜に行きましょう」
自身も黒のホルターネックのビキニに着替えた春風蘭華は、その場をまとめると一行を引き連れて、日間賀島の西側にあるサンセットビーチへと案内した。徒歩で数分の距離である。
浜に着いた一行は、まずは蘭華の知り合いが経営している海の家へと入る。
「もう7月だし今日は結構日差しも強いわ。まだ日焼け止めを塗っていないんだったら、ここに日焼け止めのオイルを用意してあります。女子はもちろん、男性陣も後で火傷のような日焼けになりたくなかったら、念入りに日焼け止めを塗っておいたほうがいいわよ」
蘭華の言葉を聞いた面々は、素直に地元民のアドバイスを聞いて、それぞれがお互いにサンオイルを塗ることになった。
江梨子と早苗のペアの場合、江梨子がわざと手を滑らせて手がビキニと胸の間に入り込んだりするハプニングが有ったり、美姫にオイルを塗るのは海斗が行うのか、夏樹が行うのかでちょっとした言い合いが有ったり、それなりにお約束の状況が出現したのだが……。
「珠美香ちゃん、塗ってもいいかな?」
「あ、うん、お願いします」
言葉にすると何でもないセリフなのに、なぜかふたりのセリフには、なにかこう非常に妙な雰囲気があったという。
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