第二地球圏物語 前史
It is historical in front of The second Earth area story
妖精的日常生活 お兄ちゃんはフェアリーガール
作:紅衣北人 / ジャージレッド
第10話 触る時には気持ち良く。これ絶対のお約束!
「はあぁ、疲れたよぉ~~~」
一週間ぶりに登校してきた美姫は疲れきっていた。あれから一週間、ぶっ通しで【研究所】での召喚実験に付き合わされていたからだ。
偶然にも召喚実験が成功したことで沸き返った現場では、まずは召喚失敗時と成功時における美姫のバイタルデータの比較に始まり、ブースターの稼働状況に何か違いが無いかということに注目が集まったのだが、その後の、そして日を改めて何度も行われた再現実験の結果、召喚成功における条件がおぼろ気ながらに見えてきた。
召喚対象物が自分の所有物であれば、ブースターの出力次第では召喚を成功させることができた。それに対して召喚対象物が他人の所有物であれば、現在のブースターの能力では、限界までブースターの出力を上げても召喚魔法を成功させることはできなかった。
では誰も所有していないその辺の石ころではどうかと試したところ、これまた面白い結果が起きた。
目の前に見えている石ころでも、見ただけの物は、どう頑張っても召喚魔法が成功することはなかったのだが、一度拾って『これは自分の物』と宣言すると、その石ころは召喚可能となった。では、一度でも拾わないとダメなのかというとそうでもなく、その土地の地権者から『その石の所有権を長谷川美姫に譲る』、もしくは『一時的に貸し出す』という契約をすると召喚可能になった。ちなみにその際の契約は書類でも口頭でも、どちらでも良かった。
数日におよぶ検証実験と試行錯誤の結果、おおよそ無機物や食料品などの命の無い有機物の召喚に関してはだいたい成功できるというところまで実験が進んだところで、ようやく今回突発的に行われることになった召喚魔法の実験は終了となった。
そして今後の予定なのだが、召喚魔法の実験を始める前に行っていた妖精の飛行魔法を応用したフェアリードライブ(仮称)搭載の実験機は、既に美姫が実験に立ち会うことは無くなり、他の妖精協力者により実験を継続することになり、美姫は召喚実験のみに集中するということになった。
なんでも今回の実験データをまとめ終わったら、美姫以外の妖精でも召喚魔法の発動が可能かどうかを実験するのだという。実は美姫は、そのままではないのだが妖精世界の皇女エルフィンの体をベースとしているだけあって、他の妖精に比べて魔法の力がかなり強いらしいのだ。
というわけで美姫が次に加賀重工航空機製作所開発部新技術研究班、通称魔法研究所にお邪魔するのは、命ある今まさに生きている生命体に対する召喚実験の準備が整ったらということになっている。なんにしてもこの世界の元人間の妖精が、本来の妖精世界の妖精たちが使う召喚魔法を使いこなせるようになるには、まだまだ先の話になりそうだった。
そういう事情もあり、午前の授業が終わったこの時間、美姫は体力の限界に達し、疲れ果てていたのである。
「珠美香ぁ~~、ちょっとマッサージしてよぉ~~。5分だけでいいからさあ」
左横の席に座る元妹で現弟である珠美香に対して美姫はおねだりしたのだが、珠美香の反応は冷たかった。
「今、台本を暗記中だからダメ。部活動が始まるまでに完璧にしなくちゃいけないんだから」
そしてぶつぶつとつぶやきながら台本を暗記する作業に没頭する。演劇部に所属する珠美香は、男であるにも関わらず外見は完全にかわいい女の子にしか見えない男の娘ということで、主役であるシンデレラに抜擢されていたのだ。
まあ実際のところは演劇部の部長であり、王子様役でもある杉野栄泰すぎの はるやすとシンデレラ役で共演したい女子演劇部員同士のし烈な争いを回避する為に、ある意味消去法的に男の娘な珠美香がシンデレラ役に選ばれたのが真相である。
しかし玉突き召喚事故により男性化する以前から杉野先輩に一方的な恋心を抱いていた珠美香にとっては、消去法だろうがなんだろうが選ばれてしまえばそれで良しというところだろう。
「暗記だったらもう十分じゃないの? 毎晩遅くまで台本を読み込んでいるって、お母さんから聞いているよ」
ここ最近の美姫自身は研究所での疲れもあり、帰ってきて食事と入浴を済ませたらすぐに寝ているので、珠美香が夜遅くまで頑張ってる姿を実際に見ているわけではない。
「十分じゃダメなのよ。完璧じゃなきゃ。だからもう構わないで。集中したいの」
取り付く島もないと諦めた美姫は、それではとばかりに後ろの席の男子生徒、佐藤雄高に声をかけた。
「佐藤君、いきなりで悪いけど、ちょっと背中押してマッサージしてくれるかな?」
美姫は返事も待たずにふらふらと力なく飛んで、後ろの席の机にぐたぁとうつ伏せになる。頭を前、足を後ろ、つまりその席の主である佐藤雄高に足を向けている。礼儀も恥じらいもあったものでは無い。さて妖精サイズとはいえ、制服のミニスカートからのぞく白い生足が眩しい。更には見えそうで見えないというのもポイントが高い。
何が見えそうというのは想像の通りであろうから、あえて説明はしないでおこう。
つまりはそのような姿態で、美姫は雄高に『マッサージをしてくれるかな?』と、頼んでいるわけであり、それを断れる精神力を雄高は持ち合わせていなかった。
「はっ、お姉さんのお頼みとあらば喜んで!」
妖精サイズであり、なおかつ美姫は元男である。しかしそんなことは関係ない。合法的に女子クラスメイトの体に触れるとあって、雄高は張り切って美姫の頼みを受け入れた。まずは左手でそっと何も警戒することなく寝ている美姫の、腰からヒップにかけての曲線部分を押さえる。マッサージの際に、妖精の小さくて軽い体がずれて移動しないようにするためだ。けっしてやましい気持ちでお尻を触っているわけでは無い。……たぶん。
どちらかと言うと幼児体型と表現される美姫であるが、それは他の妖精と比較しての話である。妖精は皆、なぜか美男美女でスタイル抜群しか居ないのが常識であるのだ。
そんな美男美女な妖精と比較するから美姫は幼児体型に見えるのだが、人間と同サイズに拡大して考えた場合、日本人女性の平均的なスタイル基準を大体満たしていると言える。つまりボンキュッボンなスタイル抜群なタイプでこそないが、そこそこスタイルも良いと言えなくもないということだ。
というわけで、美姫の腰からヒップにかけての曲線は、佐藤雄高の左手に程よく気持ちよい感触を提供したのだった。雄高はその感触を楽しみつつ、右手の人差指と中指を使い、まずは美姫の肩の筋肉をほぐし始める。
最初は優しく、次第に強く指圧をほどこしていく。
「ん、あぁ……」
小さく漏れる美姫の艶声は、雄高の指が美姫のツボを確かに押したという証だった。その声を聞いた雄高は、己の指先に神経を集中させつつ、徐々にその指圧先を肩から背部中央へと、背筋に沿ってゆっくりと移動させていく。制服の背部にある二つの縦長のスリットからは小さく白い羽がその姿を見せているが、羽を傷つけないように指先は上手にその部分を回避していく。
「強すぎたりしませんか? 痛くないですか?」
相手に不安感を覚えさせないように、雄高はできるだけ低い声で、ゆっくりとした口調で話す。そしてその問いに対する美姫の答えは、小さな吐息だった。
「あぁ、ふぅ……」
これはもうこのまま続けるしかないと思った雄高は、右手の人差指と中指を美姫の背中の上でゆっくりとローリングさせつつギュッと押し付けたり、フッと力を抜いたりと緩急織り交ぜてのマッサージを続ける。さらに左手は美姫の腰とヒップというよりも、ほとんどお尻の上から太ももにかかる部分に移動して、手のひら全体で圧力をかけたり緩めたりといった動作をしていた。
「はぁ~~~、いい気持ち……」
もはやどこを触っても問題ないぐらいにまで美姫は雄高のマッサージに翻弄されている。その声はとろりとした蜂蜜のように甘かった。
「じゃあ、もう少し広くマッサージをしてみましょう」
そういいつつ背中を上下に動いていた雄高の右手の二本指が、左右への動きを追加した。つつつっと右へと動いた雄高の右手の中指は、美姫の背中を通り過ぎ、脇へと至り、そして目的地である胸の横へと到達した。
「ひゃっ! ……あうぅうん」
一瞬驚いた美姫が悲鳴のような声を上げかけたが、すぐに気持ち良さが上回った声に代わる。右の胸の横に到達した中指は、小さいとはいえとても柔らかな感触をしばし楽しんだ後に涙の別れを済ませ、今度は隣の人差指が美姫の体の左側へと移動を開始した。
「と、とろけそう……」
体だけではなく、脳みそまでとろけていそうだ。そして美姫の左の横胸に到達した雄高の人差指は、軽く、ほんの軽くだけ美姫の二番目もしくは三番目くらいに敏感なところをタッチすると、すぐさまマッサージの仕事へと戻っていく。
二本の指は右に左にと移動しつつ、さらには上下へも移動もしながら、本来の仕事である美姫のこわばった筋肉をもみほぐす仕事を遂行しつつ、右横や左横の胸をタッチするという役得をちゃっかりと得ているのだった。
「はうぁ~~~、ほ~~~っ、き、気持ちいい~~~っ! あぁ、うぅん、おぉ……」
美姫が気持ちよさそうにあげる声は次第に大きさを増し、雄高に対し、もっとしてくれとの合図を送る。
しかし疲れてこわばった筋肉をほぐされて気持ち良いのか、それとも微妙な圧力で押さえつけられているお尻や太ももが気持ち良いのか、はたまた意図的なのがばれない程度に軽く素早く横胸を触られているのが気持ち良いのか、美姫本人にも分からない状況のまま、さらに艶やかな声を上げ続ける。
2年4組の教室中の耳という耳が、美姫が上げる艶声に集中し、各人の口がその動きを徐々に停止させたその瞬間、ガラリッと、教室の戸が開いた。
「やほー、珠美香ちゃんに美姫お姉さん、今日は天気も良いし、外でお弁当食べようよ……。って、何? この雰囲気?」
入ってきたのは珠美香が女性だったときからの親友で大島早苗である。
「……ふむ、なるほど。どうやら無粋だったようですね」
後から入ってきて、美姫が佐藤雄高にマッサージ(?)を受けているのを見て、状況を素早く理解したのは、同じく珠美香の親友の水城江梨子である。
「あ、早苗ちゃんに江梨子ちゃん、こ、こんにちは」
ぎこちなく珠美香が返事をする。その動作は油が切れたブリキ人形のようだ。
「はうぁ~~~、気持ち良かった。佐藤君ありがとう。またお願いするね」
美姫はとろんとした表情のまま、雄高にお礼をいう。
「あ、いえ、お姉さんのお頼みでしたらいつでも大歓迎です」
「佐藤君のマッサージって、本当に気持ち良かったよ。ずいぶんと溜まっていた疲れが全部ほぐれて体が軽くなっちゃった」
ほら、だから浮いちゃってるでしょ? などと冗談を言いつつ美姫は背中の羽を伸ばして飛行モードにすると、ふわふわと浮いてみせる。
「お役に立てて良かったです」
「お礼になにかしてあげたいけど、何がいいかな?」
「いえいえ、既にお礼はもらっていますのでお気になさらないでください」
手のひらに残る感触と、耳に残る美姫の艶声の記憶がお礼そのものであり、報酬であるのは言うまでもない。きっと今晩のおかずは豪勢だろう。つまりはそういうことだ。
「で、珠美香ちゃんに美姫お姉さん、すぐ外に行ってお弁当しよ。早くしないといい場所がなくなっちゃうよ」
「おお、外で食べるのもいいねぇ。珠美香、早く行こうよ」
「いや、お兄ちゃん。ちょっと、もうちょっとだけ待ってくれる、かな?」
弁当と聞いてすぐに元気な様子になる美姫と、顔を赤らめたまま、どこか慌てた様子の珠美香。ふたりの反応の違いをいぶかしんだ早苗だったが、何かを言う前に、すぐ後から付いて来た江梨子に後ろから肩を掴まれた。
「早苗さん。美姫お姉さまはともかく、今の珠美香さんはすぐには立てないから、もう少し後にしたほうが良いんじゃないかしら? それと美姫お姉さま。分かっててやってますね?」
高校2年生なのに、男の生態(性態)を熟知している江梨子だった。
「えへへへへ、もう【たってる】から立てませんってやつだよね。ごめんね珠美香。お姉ちゃん、いい声出し過ぎちゃったね」
やはり確信犯だった美姫。珠美香の顔のあたりを飛びながら、『あ~ん』とか、『うふ~ん』とか言って、珠美香の反応を楽しんでいる。すると珠美香は、無言のまま読んでいた台本をクルクルと丸めて筒状にして振り上げると、スパーンッと、飛んでいる美姫を叩き落とした。
「痛ッ! 珠美香、ひどいよぉ~~。お姉ちゃん何にもしてないのに」
致命傷にはならなかったようで、叩きつけられて床にベチャッとなった美姫は、すぐさまふらふらと飛んできて珠美香に抗議する。
「珠美香ちゃん、容赦ないわね。はい、美姫お姉さん、おー、よしよし」
早苗は珠美香をジロリと見たあと、飛んでいる美姫を胸元で抱きかかえて頭をなぜてやる。対する美姫は、早苗の高校生らしからぬ大きさと柔らかさを兼ね備えた胸の谷間で幸せとともに埋もれることになる。
「ところで美姫お姉さま、そちらの男子、佐藤君でしたっけ。彼のマッサージのテクはそんなにも気持ち良かったのですか?」
「うん、江梨子ちゃん。もう体がとろけそうなぐらい上手で、気持ち良かったよ」
「そうですか。あの、佐藤君、ちょっとお願いしたいのですが、最近私も肩から背中にかけて凝りが激しいのですが、ちょっとマッサージしていただけませんか?」
そのまま空いている美姫の席の椅子に座り、雄高に対して背中を見せる。
「え、いいの?」
突然の展開に驚く雄高。美姫相手の場合なら、妖精ということもあり、性的に興奮はしても本番に至る関係に発展することは無いと認識しているだけに、二次元の嫁を相手にするような感覚で接することが可能だ。しかし相手が江梨子となると話が違う。キョドッている様子がまるわかりだ。
「いいも何も、私のほうから頼んでいるんですけど?」
江梨子は、ふたりっきりならともかく、大勢の目がある教室の中では流石にセクハラ行為も無いだろうという読みから安心しているので、落ち着いたものだ。
「じゃ、じゃあ、失礼して……」
「ちょっと、待った!」
立ち上がって、江梨子の肩を揉むために邪魔となる机を横にどかしかけた雄高の動きを、珠美香が制止した。しかし立てない事情はそのままなのか、未だに珠美香は座ったままである。
「あら、どうしたんです。珠美香さん」
「え、江梨子ちゃん。江梨子ちゃんはさっきの様子を見てないから分かってないようだけど、そいつの、佐藤君のマッサージテクは、マッサージというよりもセクハラテクだから、やめたほうがいいわよ」
「この肩凝りが治るなら、多少のセクハラは気にいたしませんが?」
「おお、江梨子ちゃん、潔いわね。だったら私も後でしてマッサージしてもらおうかしら。ここ何年か、肩凝りが治らないのよね」
「早苗ちゃんは、マッサージをして肩凝りが治っても、すぐにまた再発すると思うよ。だって、こんなにも大きくてふかふかのを持っているから……」
珠美香は、三人の発言を聞きながら、頭が痛くなってきた。
「もう、江梨子ちゃんに早苗ちゃんに、お兄ちゃんまで、一応みんな女子高校生なのよ。若いのよ。ピチピチなのよ。なのに何! どこかのおばさんみたいに『肩が凝った』だの『疲れが取れない』だの、いったい何を言ってるのよ」
「す、珠美香ぁ~~~! お姉ちゃん、お姉ちゃんは嬉しいよ! ようやく私のことを女子高生扱いしてくれたんだね♪」
名残惜しさを残しながらも、美姫は早苗の母性の象徴ともいえる場所から飛び立つと、珠美香の顔に抱き付き、ほっぺたをすりよせるのだった。
「一応ってつけたでしょ、一応って」
珠美香は、ほっぺたをすりよせてくる美姫を引っぺがすと、無造作に宙に放った。羽を持っていて飛べる相手と分かっているだけに、遠慮が無い。美姫は空中で姿勢を取り戻すと、泣く泣く早苗の胸に着地した。
「とりあえず江梨子ちゃん。江梨子ちゃんがどうしても佐藤君からマッサージを受けるというなら、先に私が受けてみるわ。とりあえず仮にも一応、私の体は、その、お、男だし、セクハラは受けないと思うから、純粋にマッサージの腕を見れると思うの」
親友をセクハラから守らねばという使命感から、珠美香が立ち上がった。まだ座っているけど。
「おおお、珠美香! ようやく自分のことを男だと意識してくれたんだね! お姉ちゃんは、お姉ちゃんは嬉しいよ!」
また叩きつけられてはたまらないので、飛び立つことはせず、早苗の胸の谷間に抱きしめられながら、うれし泣きをする美姫。演技なのか本音なのか、おいおいと泣いている。
「とりあえず仮にも一応ってつけてるでしょ! まったくもうお兄ちゃんは何を聞いているのよ。じゃあそういうわけだから佐藤君、まずは私のほうからマッサージしてみてくれる? 私も最近、演劇部関係のことで夜更かししているから、ちょっと疲れ気味なのよ」
珠美香は美姫を叱りつけると、そのまま雄高に対して声をかけ、マッサージをしてくれるように要求した。
「よ、よし。分かった。まずは長谷川さんからだな」
一応、珠美香の体は間違いなく男であるとはいえ、外見上からは男装した女の子にしか見えない。完全な男の娘である。そっちの趣味が無くても、見た目のインパクトにはかなわない。雄高は少々遠慮がちにその手を珠美香の肩に伸ばした。まあ、男とはそんなものである。
「よろしくお願いします」
「じゃ、いくよ」
珠美香は、雄高のマッサージの腕は全く信用していなかった。美姫があれだけ気持ちよさそうにしていたのは、人間よりも薄くて敏感な肌をした妖精だからだと思っている。というわけで、『私は騙されないぞ』という気持ちでマッサージに臨むことになったのだが、珠美香が抱いた雄高のセクハラ疑惑は、雄高の指の最初の一押しで、ものの見事に粉砕されることになった。
「うっ、おぉっ、はふぅ……」
とりあえず何がやばいというか、雄高の指圧からくる刺激のすべてがやばかった。まずは指先、そして手のひら、その後に来る肘を使った強い圧力。かといって強いばかりではなく、緩急織り交ぜた弱い刺激もまた格別である。
「長谷川さん、この辺り、凝ってるね。どう、こうすると気持ちいいでしょ?」
もはやプロ並みのセリフを吐く雄高であるが、それに対して突っ込みを入れるだけの余力は、珠美香にはなかった。雄高のマッサージをされていると、本当に気持ち良いのだ。珠美香の口からは、嗚咽のような、小さな声の連続しか出てこなかった。
「お、あっ、あっ、うっ、はうッ。あぅ~~~ん」
美姫に対しては、小さな妖精の体を傷つけちゃいけないという遠慮があったのだが、珠美香の体をマッサージする雄高の指や手は、遠慮なく最適な力を込めて、珠美香の凝り固まった筋肉をほぐしていく。まるで絨毯爆撃のように、余すところなく全身に襲い掛かってくる雄高の指や手は、珠美香の体に性的とはまた違った快楽を与えつつあった。
さて、その珠美香を見守る美姫や早苗、そして江梨子は、雄高のマッサージテクに対して見とれているしかなかった。どう見てもセクハラには見えない雄高の手の動きからして、本当にマッサージテクのみで、珠美香がここまで気持ちよさそうにしていることが分かったからだ。
というか、あれだけ気持ち良くなれるなら、多少のセクハラくらいならどうでも良いと思えてきたりもする。これは見ている三人に共通する意見のようだった。
「これは、やはり体験してみるしかありませんね。珠美香さん、本当に気持ちよさそう……」
「確かに珠美香ちゃんの声を聞いていたら、私もしてもらいたくなっちゃったかも。肩凝り治るかな?」
「うーん、私ももう一度してもらおうかな。アレは本当に気持ち良かったし」
江梨子に早苗、そして美姫が、次の順番を巡ってじゃんけんを開始し始めた頃、男の娘、珠美香の艶声が2年4組の教室中に響き渡った。マッサージ開始からわずか5分後のことであった。
ちなみにその後、雄高は、指圧マスターの称号を得たのだが、どうでもよい話である。
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