昼の食事介助をしたのですが、その利用者さんはもう完全にひどい認知症です。会話が成り立たないのは当然として、食事もまともにできません。
ただ、食事をする意欲はありますので、食事をスプーンに載せて口元まで持っていくと、ちゃんと口を開けてもらえます。しかし口に入れた途端、スプーンを強く噛んでしまいます。
硬質プラスチックのスプーンだと、簡単に割れてしまうほど噛む力は強いです。事実、私が知っているだけでももう2本のスプーンが犠牲になりました。
金属製のスプーンを噛むと危ないかな、ということでプラスチック製のスプーンを使ったわけですが、割れるだけプラスチック製のスプーンのほうが危なかったです。
今は自宅から持ってきてもらった柔らかい材質の硬めのゴムでできたようなスプーンを使って介助しています。これなら噛んでも危なくないし、割れないです。
さてそんなスプーンで食事を口まで持っていくと、10のうち1も残らない感じでほとんどの食事が口から流れ落ちてしまいます。
口に入れられたスプーンを、「イー」という口の形で噛んでいるので、口の両端が開いてしまい、そこから出てしまうのです。
だからスプーンを持っていっても持っていっても、口の中に入れても入れても、お椀の中のご飯などが減りません。むしろ唾液で増えているのではという錯覚に陥る程です。
昼食をお茶も含めて食べさせ終わるのに1時間以上かかってしまいます。
そこで思い出したのが、とある落語の中のワンシーンです。
ケチな人が、同じくケチな人と、お互いのケチ自慢をしていると、食事にお金を使わないという話になりました。ケチの1人が、
『俺はご飯を食べるのにおかずなんか要らない。壺に入れた醤油の中に箸の先をちょいと漬けてそれでご飯を食べる』
と自慢すると、 もう1人のケチが、
『しかしそれじゃあどんどん醤油が減っていくだろう』
と指摘すると、最初に言い出したケチが、
『いや、箸先を醤油に着けるだろ、それでご飯を食べて、ぺろりと箸先をなめてからまた醤油の壺に箸先を漬けるから、ツバが追加されて醤油は減らねえ』
と、答えるわけです。
マジで利用者さんの口に入れたスプーンからこぼれ落ちてくる料理にツバが混じっているのでは無いのか、だんだん増えていっているのでは無いのか? と、疑うほど全然お椀の中が減っていかないんですよ。
こういう利用者さんって、家族さんは家でどうやっているのか不思議です。
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