兄妖 39話

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It is historical in front of The second Earth area story

妖精的日常生活 お兄ちゃんはフェアリーガール

作:紅衣北人 / ジャージレッド



第39話 番外編2 夏樹の貧乳村探訪記 / 妖精的少年生活 (再録 / 微改変)


〓〓〓  夏樹の貧乳村探訪記  〓〓〓

 妖精たちの地球。今ではその月とセットにして第二地球圏と呼ばれている地球にある秋津島皇国本島の西方にある地区。いわゆる山陰地方の空を、フェアリードライブで飛ぶ小型艇がいた。

 やや長めのタマゴ型をした小型艇には、最近、といっても数年前に開発されたまだ比較的珍しい白色の太陽電池パネルが貼られており、時折キラリを太陽光を反射していた。

 小型艇は目的地に向かって一直線に飛ぶというわけではなく、何かを探しているように行きつ戻りつしながら飛んでいるのが特徴的だった。

 その船体からはトンボ羽のような形をした光の羽が大きく飛び出し羽ばたいていることからして、操縦しているのはいわゆる秋津島皇国でいうところの平民クラスのトンボ羽の妖精だろう。

 事実、その小型艇を操縦していたのは貧乳大好き妖精少年の山本夏樹であった。顔立ちはまるで女の子そのものと言っても良いぐらいの美少年である夏樹は、以前話に聞いた貧乳の妖精ばかりが住んでいるという村を探していたのであった。

 ちなみに今日の夏樹の服装をざっくり説明すると短パン&ニーソである。

 やや詳しく説明すると上着は黒の長袖で前面に大きめの装飾用の金色のボタンが縦に2列で並んでいる。4つが2列で計8個の金ボタンだ。その黒い上着の下には黒いブラウスがあり、袖先には黒いレースのフリルが付いていた。

 短パンは身体に密着したものではなく、短めのかぼちゃパンツのような形をしているが、膨らみ具合はそんなに大きくない。

 そしてその短パンから飛び出している足はニーソックスに覆われており、いわゆる絶対領域を作り出していた。男の絶対領域なんて誰得と思うなかれ。まるで女の子にしか見えない夏樹のおみ足は、ノンケの男ですら吸い寄せられるような肌の張りと輝きを持っているのだ。

 まさに男の娘妖精の面目躍如である。

 さらにそのニーソックスは右足は真っ黒なのに、左足は黒と白の縦ストライプとなっており、どことなく悪魔的な背徳さを感じさせなくもない。

 そして足元は黒いハイヒールであった。

 自然の山の中に入ろうとしているのにハイヒールなんて履いてくるなよと思ってはいけない。基本的に空を飛んで移動するのが妖精なので、ハイヒールでも問題ないのだ。

 ちなみに以上のコーディネイトは春風蘭華はるかぜ・らんかによるものである。

「前に感じた反応からしたら、絶対にこの辺に貧乳妖精さんたちがいると思うんだけどなあ」

 コックピットにて溜息をつく夏樹。その麗しすぎる姿は男女の性別すら超越していたが、外見が完全に女性寄りなのは、もちろん仕様である。

 実は例の機械たちとの最終決戦のあの日、中央大陸へと向かう途中で感じた反応こそ秋津島皇国のどこかの山中にあるという貧乳村の妖精さんたちの反応ではなかったのかと夏樹は考えたのだった。

 そこで夏樹は、高校卒業後は家業の観光旅館を継ぐことなくすぐさま第二地球圏へと渡ったのだ。

 ちなみに小型艇は、秋津島皇国に進出した加賀重工魔法研究所からコネで借りたものである。まあ一応、新型小型艇の試運転という名目ではあるのだが、人脈というものはやはり大事ということなのだろう。

「もしかすると小型艇を怖がって出てこれないでいるのかな。一応。これも機械といえば機械だし」

 ひとりそう納得した夏樹は小型艇を山中の森の中に隠すことにした。まずはゆっくりと森の上を飛びながら適当な空き地を探し始めたところ、すぐに適当な場所を見つけることができた。

 森の中にぽっかりと空いた小さな、とはいっても小型艇よりは大きなその広場には、人間の背丈の半分にはなろうかという丈の草がビッシリと生えていた。

 その草地に小型艇を着地させると、夏樹はいよいよ小型艇を降りて単独での探索をする用意を整えるのだった。

「食料や水にその他の物は小型艇の倉庫から必要に応じて召喚するとして、携行するのは最低限の食料と水以外は予備のキャンセラーとボタン電池だけでいいかな。うーん、下着とかの替えは……、まあいいか、それも召喚して取り寄せることにしよう」

 夏樹ほど魔法の使用に慣れてくると妖精世界にいた元々の妖精たちのように、キャンセラーやブースターの助けがなくてもなんとか召喚魔法を発動させることが出来るようになってきている。

 ただ、携帯用の腕輪型キャンセラーを装着しているほうが魔法の発動が楽に行えるし、もしも万が一にも異星の機械たち、ロボットが生き残って稼働していた場合の用心として、今でもキャンセラーの装着は必要だ。

 同じく万が一にも小型艇搭載の据え置き型キャンセラーが全てダウンするというような異常事態に備えて、小型艇という機械の塊のような乗り物を操縦するのに携帯型のキャンセラーを装着しておくというのは当然である。

 そして両腕に腕輪として装着されたキャンセラーを身に着けた夏樹は、キャンセラーを身に着けない場合に比べて何割か魔法の発動出力がアップされている。

 もしかしてお忘れかもしれないが、キャンセラーの主目的は電子機器から魔法への悪影響を中和しキャンセルするものであるのだが、キャンセラーには魔法の発動を補助し強める効果もある。

 その魔法の発動を補助し強める機能を取り出して強化したものがブースターであるので、キャンセラーはごく出力の弱いブースターでもあるのだ。

 というわけで秋津島皇国の元々の妖精たちよりも気楽に簡単に魔法を使える夏樹は余分な荷物を持参することなく小さなリュックに本当に必要最小限の荷物を入れただけで、小型艇の外へと出て来たのだった。

「とりあえずカモフラージュはしといたほうが良いかもしれないなあ。貧乳妖精さんたちが小型艇を機械たちのものだと思って怖がるといけないし」

 そして夏樹は空中へと飛び小型艇の上空に位置を取ると、召喚魔法を発動させた。

 すると葉が付いたままの木々の枝がバサバサっと幾つも召喚されて小型艇の上に降り注いだ。小型艇の上に敷き詰められた感じではなく適度に散らされているので、太陽電池パネルもそれなりの出力を維持出来るという感じだ。

「ま、これで良いかな。とりあえず以前に感じた反応はこのあたりで間違っていないはずだから、じっくりと探してみようか」

 夏樹は貧乳妖精が存在することを微塵も疑うことなく、その場を離れて周囲の森の奥へと飛んで行ったのだった。



 するとほとんど入れ違いという形で、草むらに身を隠しながら妖精サイズのふたつの影がゆっくりと徒歩で小型艇に近づき、その巨体(妖精サイズからしてみたら)を見上げた。

 ふたりはどうやら妖精の女性らしかったが、ふたりとも一般の妖精に比べて随分とスレンダーな体形をしているのがその服の上からも見て取れる。

 ふたりとも緑色の服を着ており、草むらにその姿が溶け込んでいた。ひとりはやや年配のようであり、もうひとりは若く見える。

 特徴的なのはその背中の羽であった。普通の妖精たちに比べてひどく小さいのである。

 普通の妖精はその背中に物理的な肉体としての羽を持っているが、普段は妖精を正面から見ると羽の先端が身体の端から見えるか見えない程度の小さめな羽となっている。

 そして妖精が空を飛ぼうとして背中の羽に魔力を込めると、トンボ羽やコウモリ羽や鳥の羽の形に応じた形で光で出来たホログラフィのような羽が大きく伸びてきて、飛行が可能となる。

 もちろん羽の形状だけではなく色も再現されているので、黒いコウモリ羽をした妖精なら、伸びてくる光の羽も黒いコウモリ羽となる。

 話を戻して、今、小型艇を見つめているふたりの妖精の背中にある羽は、普通の妖精の羽とくらべてどう見ても半分以下。いや、三分の一程度の大きさでしかなかった。

 ちなみにふたりとも一般的なトンボのような透き通った羽である。

 さて、そのふたりの妖精たちが小型艇を見ながら声の大きさを抑えたひそひそ話をし始めた。



「……アナトお姉さま。これは一体何なのでしょうか?」

「外側は前に見たことがある機械たちのような材質で出来ているように見えるわね」

「えっ!? それじゃあこれは機械なのですか?」

「待って。断定は出来ないわ。機械たちから感じる嫌な波動は、この物体からは感じられないし」

「うーん、そうですねえ。機械じゃないけど機械のようなものということなら、卵だったりして」

「えっ、卵? ……確かに形は卵のようだけど、まさか機械が卵から生まれるわけないでしょ」

「じゃあ機械の卵じゃない何かの卵かもしれないとか?」

「分からないわ。分からないことだらけ。とにかくキーナっ! 村長様に知らせに行くわよっ!!」

「あっ、待って下さい。アナトお姉さまーーっ!!」

 ふたりの妖精たちはきびすを返すと、空を飛ぶのではなくポーン、ポーンとジャンプをする感じで森の奥へと消えていくのだった。



「……まただ。またこの泉に戻って来ちゃったよ」

 さて、張り切って山中の森の木々の間を飛んでいた夏樹だったが、小型艇を降りてから既に3~4時間。夏樹は疲れ切っていた。なぜなら完全に道に迷ってしまったからである。

 気がついたのは三周目のときであった。

 きっかけというか目印になったのは、ちょうど今、目の前にあるきれいな泉であった。人間サイズとしてもけっこう大きな泉であるので、妖精サイズとしてみればかなり大きな泉である。

 泉の周辺にはそこかしこに大小様々な岩が転がっており、何となく日本庭園のような趣も無くはないが、草に覆われ、苔むした状態からするに自然に出来上がったものであるのは間違いない。

 その泉であるが、最初は夏樹も大きくてきれいな泉だなとしか感想を持たなかったのだが、そこを通過して20分も森の中を飛んで行くと、またその泉が出てきたのだ。『やれやれ、元にもどっちゃったよ』と最初は単純に考えていたのだが、また20分後にその泉に戻って来てしまったとあっては、自覚せざるを得なくなる。

 そして意地になって進むこと更に数回。夏樹は約20分ごとにその泉に遭遇することになった。

「でもまあ、これは当たりってことでいいのかな」

 夏樹は肉体的には疲れていたが、その精神は満足感に満ちていた。道に迷うにしてもこうも連続で迷うということは絶対に何かあるからだ。おそらく巧妙な偽装とか、場合によっては貧乳妖精たちの魔法により村自体が隠されている可能性がある。

 妖精の魔法力の強さはその妖精が女性であるなら胸の、つまりはおっぱいの大きさに比例するという事実がある。

 したがって貧乳妖精たちの魔法力は弱いのであるが、だからといって貧乳妖精たちに魔法が使えないというわけではない。単に現在の主流となっている豊乳妖精たちに比べて魔法力が弱いというだけの話だ。

 というわけで夏樹は、貧乳妖精さんたちの召喚魔法の応用で空間の一部が捻じ曲げられてループ上になっているのだろうと考えたのだ。

 実際には後日になって明らかになるのだが、この場所は召喚魔法による風景の光学的な偽装により擬似的にループ化しているだけで、空間そのものが完全にループ化したわけでは無いのであったが、まあ効果のほどは同じであると言える。

 話を戻そう。つまり夏樹はこの辺りにこそ目的地である貧乳妖精さんたちが暮らす貧乳村があると考えたのだ。だからこそ『当たり』という発言につながることになる。

「森の上に出て空を行くなら道に迷うこともないんだろうけど、ここはあえてループ状になったこの場所にこそ貧乳村があると見て、徹底的に調査すべきだね」

 そして夏樹は今日はもう遅いということで、その泉のほとりで野営をすることにした。

「まずはテントを召喚しなくては」

 精神を集中した夏樹は、妖精サイズの小さなテントを小型艇の倉庫から召喚した。淡い光と共に出現したテントを満足そうに確認した夏樹は、早速テントの設営作業に入る。

 しかし設営作業とは言っても折りたたまれたテントを開いて、あとはテントが風で飛ばされないように地面に固定するだけである。

 注意点としては元々は主に猫などが使うペット用のテントであるからして、出入り口を閉じるジッパーが【外側からしか開け閉めが出来ないようになっている】ので、中から出入り口を閉じようとしても腕が中から外に出せる程度の隙間がどうしても空いてしまうということだろうか。

 それから元々がペットが使用する屋内用のテントという性質上雨露を防ぐ機能は皆無なので、晴天時にしか使えないというなんちゃってテントであるという点も注意点として挙げられる。

 そういった注意点があるテントだとしても、テントはテントである。テントの床に毛布を敷き、折りたたまれた毛布の中に使い捨てのカイロを2~3個もいれておけば、簡易的な床暖房風にもなる。

 その上に寝て布団をかぶれば、まだ春も早くてそれなりに寒い夜をしのぐことも出来る。

「とりあえず今日のところはここに泊まって、相手の出方を見ることにしよう。大体貧乳の娘は何かと控えめだからな」

 などと偏見丸出しな感想を述べる夏樹であった。



 さて、その夜のこと。泉のほとりに張られたテントを目視出来る場所に、どこからともなくふたりの妖精たちが現れた。

 いや、どこからともなくというのは語弊がある。泉の周辺には大小様々な岩々があるのだが、それらによってうまい具合に隠された場所には妖精が楽に通れる程の穴があいており、そこからふたりの妖精が現れたのだった。

 それは年上のアナトと年下のキーナと呼ばれた妖精たちであった。彼女たちは夏樹が乗ってきた小型艇を発見した直後に村へと戻り村長のメリカラにその件を報告したのだったが、そこで新たな任務を得て、この場にやってきたのだった。

「アナトお姉さま、確かにあの中に妖精がひとりで寝ているようです』

「村長様が仰ってたようにあの大きな機械の卵のようなものは、本当に乗り物だったわけね」

 そんなことを言いながらアナトとキーナのふたりは、抜き足差し足でそっと夏樹が寝ているテントへと近づいて行った。

「どうやらここから中に入れるようね」

 アナトが指差しているのは、ジッパーで閉じられているテントの入り口である。

「もしかしてこの金具を動かせばいいんでしょうか?」

 などと言いつつキーナは、ジッパーの金具を手に持ち的確にジッパーを開いていく。

 するとテントの中で布団にくるまり、すやすやと寝ている夏樹が居た。

 なお、昼間に着ていた衣装は折りたたまれて枕元においてあるのが見て取れる。現在の夏樹はどうやらパジャマ姿だ。淡い黄色の地に輪切りにされたオレンジの絵柄がプリントされているごく普通のパジャマである。

「きれいな顔してますね。間違いなく女の子……ですよね」

「この場所に来ているということは、女の子、それも貧乳の女の子以外ありえないと思うわよ」

 夏樹の顔を見てなにやら話しているキーナとアナトであるが、それはいったいどういうことかということを説明しよう。

 実は妖精たちが使う念話という魔法は脳内情報を召喚・送還する魔法であるのだが、魂の波動が同一もしくは同一に近いほうが通じやすいという特徴がある。

 いわば周波数が近いというやつである。

 貧乳妖精とは異世界の人間によって作られたいわば妖精という種族の原種へと先祖返りした妖精たちであり、他の妖精たちとはまた違った魂の波動を持っているグループである。

 彼女たちは貧乳であるがゆえに他の妖精、特に大きなおっぱいが好きになるように遺伝子的な改良を加えられた男の妖精たちから忌み嫌われていた。

 そこで自分の胸が貧乳状態からもうこれ以上成長しないと悟った貧乳妖精たちは、夜な夜な自分へと呼びかけてくる念話に従ってここ、山陰地方に存在する貧乳村へとやってくるのだ。

 もちろん呼びかけているのは既に貧乳村の村人となっている貧乳妖精たちであったのは言うまでもない。

 というわけで逆説的に、ここにいる夏樹は貧乳な妖精の村人たちの念話を受けてやってきた貧乳妖精なのだろうと、アハトとキーナは話し合っていたのだ。

「でもお姉さま、万が一ということもありますから、このが貧乳かどうかを確認してみる必要があるのではないでしょうか?」

 何故か頬を上気させてそう言うのはキーナである。

「まったくキーナは物好きなんだから。貧乳であるのは服の上からでも分かるでしょ。まるで男の子みたいにぺったんこな胸をしているんだから貧乳っであるのに間違いないわよ」

 アハトはやれやれとため息をつく。キーナが『確認してみる必要がある』という意味は、そこで寝ている妖精、つまりは夏樹の胸をはだけてその貧乳を見て触って、そして舐めて本当に貧乳であるかどうかを確認しましょうと言っているのだ。

 なお、貧乳村には貧乳の妖精の『女性しかいない』ので、とうぜん村人同士における恋愛というか肉欲の解消の為のお相手は『女性同士で』ということになるし、キーナは特にその傾向が強いということは言うまでもないことである。

「でもやっぱり確認してみないことには村に連れて行くことはできないですし……。ええと、あれ?」

 話をしている間にも手を動かして夏樹が着ているパジャマのボタンを外して胸をはだけさせていたキーナは、混乱したような声を上げた。それに対してすぐさまアハトが問いかける。

「どうしたのキーナ。何か不審な点でもあったの」

「いえ、まるで男の子のようにぺったんこな胸というか、男の子にしかみえないほどぺったんこなんですけど」

「え、まさか……。うーん、確かにぺったんこすぎるけど……、ほら、よく見て。ぴっちりしたシャツに浮き出た乳首はけっこう大きいわよ。まあ小さめではあるけど、男の妖精の乳首に比べたらかなり大きいし、やっぱり極端に貧乳な女の子じゃないのかしら」

 実は夏樹、貧乳好きが高じて、ひとりで遊ぶ際は自分の乳首をいじって気分を盛り上げるというプレイをしているので、刺激され開発されまくった乳首は男としてはちょっと大きすぎるほどまで大きくなっていたのであったっ!!

「なるほど。確かにこの乳首の大きさは女の子ですね。……でも、もしかして万が一にも男の妖精であるという可能性もありますから、ちょっと確かめてみるのは止めませんからね」

「もう、本当に好きなんだから。それだけ可愛い顔をした男の子がいるわけないと思うけど、そんなに気になるなら下のほうを直接見てみたら?」

「それは駄目ですよ。というか後からのお楽しみに取っておかなくては」

「ふふ、そうね。それに胸まではともかく、下まで無断で見ちゃうのはちょっとね」

「ねーっ♪」

 何故か胸を見るのは本人に無断でもOKと言っているようにも聞こえるが、そこはそれ、貧乳妖精たちの文化というかメンタリティというものなのだろう。

 というわけでキーナは夏樹が着ているランニングシャツを上へとずりあげ、その胸を露わにするのだった。

「へー、アハトお姉さま。この、本当に究極的にぺったんこな胸に女の子としてはちょっと小さめな乳首がくっついてるだけですよ。でも確かにこの大きさの乳首は男としてはありえない大きさですよね」

「で、キーナ。キーナとしては更に確かめてみるのよね?」

「もちろんですよ。ここで止めては女がすたります」

 そしてキーナはおもむろに夏樹の右の乳首をその舌でちろりと舐めたのであった。

「あん❤」

 すぐさま夏樹の口から艶やかな声が漏れた。完全に寝ていてすらも反応するとは、流石にひとり遊びの際は乳首もいじるのが基本となっているチクニストである。

「かなり反応がいいみたいね。これはもう女の子で間違いないわね」

 横で見ていたアハトが感想を漏らす。

「わからないですよぉ~。もうちょっと攻めて反応を確かめてみましょう」

 確かめているのか単純に自分の欲望に忠実なのか、キーナは舌先で舐めるだけでは飽き足らず、夏樹の乳首ごと口に含み、乳首周辺の胸もあわせてその唇で覆うのだった。そしてその柔らかな唇と舌を唾液で湿らせ、ぬめぬめとした触感を夏樹の右乳首とその周辺に与え始めた。

「あ、うん、あぁ❤」

 それに合わせて夏樹が良い声で鳴いているが、どんな夢を見ているのか口からキラリと光るよだれを垂らし、頬は赤く上気し始めていた。

 その声に興奮したキーナは更に右の乳首を攻めるのだったが、ふと左乳首のことを思い出し、その寂しそうな左乳首を右手の指でちょんと摘み上げ、コリコリといじり始めた。

「ああ、ダメぇ❤」

 なにがダメなのか問い正したいところではあるが、あいにくと夏樹はまだ眠ったままである。

「乳首以外のお胸の反応はどうなのかしらね?」

 夏樹の右乳首から唇を離したキーナは、今度はその周辺へと舌を這わせた。舐められた跡がテラテラと光り、妙な艶めかしさを醸し出している。

「んん、あうっ❤」

「アハトお姉さま、この、ものすごく感度が良いみたいですよ」

 新たな貧乳の後輩が来てくれたことを喜んでいるのか、その他のことを喜んでいるのか、キーナはとても良い笑顔で横で様子を伺っていたアハトを見たのだったが、何故かアハトは口に両手を当て、驚きの表情を浮かべていた。

「……あの、お姉さま。何をそんなに驚いているんですか?」

 キーナのその疑問を受けてか、アハトは右手を口から離し、ゆっくりとその手で夏樹の股間を指差したのだが、そこには女の子にはありえない膨らみがあったのであった。

 テントの中で更にテントを張るとはこれいかに?

「うそっ! まさかこんな可愛い顔して男だったのっ!?」



 その後、キーナの大声で目を覚ました夏樹は、目の前にいたふたりの貧乳妖精さんたちを見て、若い男女がするべきことをしてしまった。

 乳首を執拗に刺激されてナニがスタンバイ状態でビンビンになっていた夏樹には、手加減という言葉は辞書になかったという。

 お互いに初めてだったのだが何とかうまくいき、アハトとキーナのふたりも同性同士では得られない快感と充実感を知ったのだった。

 ……半ばレイプ的な状況であったのに訴えられることも罰せられることもなかったのは、結局は夏樹の顔が女の子そのものとしか見えない顔だったからにほかならなかったのであるが、全くもってこれだからイケメンというのは始末に負えない。

 さて、そしてそのまま夏樹は地下に広がる貧乳妖精たちが住む貧乳村へと招かれ、村長のメリカラに気に入られることになり、やがては貧乳村の貧乳妖精さんたちのうち、受胎能力を持つ年齢の村人たち全員とするべきことをし、生涯で100人以上の子供を作ることになるのであるが、そのへんの事情はまたどこかで語ることが出来るかもしれないが、語られないかもしれない。

 ま、リア充すぎるやつの話なんかしたくないというのが本音だけどね。

 とりあえずコレにて終わり。




〓〓〓  妖精的少年生活(再録 / 微改変)  〓〓〓

※作者注
 ホームページからの再録になります。初出は2002年6月になります。句読点を直したり平仮名を漢字に直したりはしていますが基本的にはリメイク前の作品ですので、リメイク後の作品とは微妙に設定が違います。
 しかしこうしてみると文章能力ってあんまり進化しないものなのね……。


「あぁ~、ちっくしょお~、いってぇ~なぁ~、もう!」

 部屋に戻ってくるなり山本夏樹やまもと・なつきは、とっても男らしい(?)口調で悪態をついた。

「夏樹ったら生理なの? 久しぶりね」

 ポテチを食べながら気のない返事をする香山由美かやま・ゆみ。2人は、大木南高校の女子寮、桜花寮のルームメイトである。

「しばらく来なかったから油断してたぜ。くっそぉ~、これだから女ってやつは嫌いなんだ」

 どうやら夏樹の生理痛はかなり重いらしい。それにしてもそこそこ可愛い顔をしているのにその口から汚い言葉がポンポンと飛び出てくるさまはちょっとアレである。まったくもったいない……。

「生理不順でなかなか来ないくせにいったん来るとものすごく重いもんね。夏樹の生理痛って。で、どうするの? どうせナプキンもタンポンも用意していないんでしょ?」

 やはり気のない表情のまま慣れた口調で夏樹の相手をする由美。その手にはどこから取り出したのか、生理用のナプキンとタンポンが握られている。

「生理、生理って、言うな! くそう、男にさえ生まれていれば生理になんかならなくてもすんだのにっ!」

 そう言いながらしっかりと由美の手から生理用ナプキンを奪い取るようにして受け取る夏樹。どうやら夏樹はナプキン派らしい。

「夏樹ってば、いつも男の子に生まれたかったって言ってるわよね」

 いつものことなので由美の口調もちょっと投げやりな感じだ。

「あたりまえだろ。私は女なんかに生まれたくは無かったんだ。くそう、母さんの腹の中に、“お○ん○ん”さえ置き忘れて来なければ……」

 一応、仮にも女の子の発言とは思えない言葉を口にする夏樹。彼女は男の子に生まれたかったらしい。

「じゃあさ、いっそのこと男の子の妖精さんに召喚してもらって、妖精の男の子になっちゃえば?」

 最近では妖精による召喚事件が一般化していることもあり、半分、冗談のつもりで言ったのだが、真剣に考え込みだした夏樹を見て由美は慌てだした。

「ねえ、夏樹ったら何を真剣に考え込んでいるのよ。男の子になりたいからって妖精の召喚なんか受けようって気をおこしちゃだめよ」

 冗談が通じないと見た由美は夏樹にそう言ったのだが、彼女は聞いてはいなかった。何で今までその手を思いつかなかったんだろうという想いでいっぱいになった夏樹の頭は、どうすれば妖精に召喚してもらえるのかということしか考えていなかったのだ

 はてさて、どうなることやら……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


『魂の波動を同じくする者よ♪ 私は……』

 ここは夏樹の夢の中。そこで夏樹は自分に対して歌うように呼びかけてくる声を聞いた。

(やった! 妖精だ! 毎日妖精のことを考えていた甲斐があったぜ!)

 夢の中で歓声(?)を上げる夏樹。いきなり聞こえてきた夢の中の声を妖精からの召喚の声だと見ぬくあたり、ただ者では無いのかもしれないが、単なる偶然かもしれない。

『あのう……、もしもし? もしかして私がこれから何をしようとしているのかご存知ですか♪』

 夏樹の反応に対して、むしろ妖精の方が戸惑っているように思える。その妖精はおずおずとした雰囲気の声で質問してきた。

(私を召喚したいんでしょ?)

 当たり前のことを聞くなよ、という感じで答える夏樹。その雰囲気はとてもうれしそうだ。

『はい♪ よくご存知で♪ では召喚に応じていただけるのですか? それなら早速、あなたのお名前を教えてください♪ ちなみに私の名前は……』

 意外な展開にちょっとどころか大いに戸惑いながらも、うまく召喚ができそうだと説明もなにもかもすべてをすっとばして名前を訊いてくる妖精。しかしその言葉を遮るようにして夏樹の質問が飛んだ。

(その前にちょっと質問! お前、男か? それとも女? どっちなのか答えてもらおうか)

 ここが肝心とばかりに真剣に質問をする夏樹。夢の中なのにまるで手に汗を握るほどの緊張感が漂っている。

『……てへっ♪』

 それに対して沈黙と御魔化し笑いで答える妖精。何かを心配しているらしい。

(こらっ! どうした。早く答えろよっ!)

 じれてきた夏樹は声を荒げた。その迫力に観念したのか、妖精はようやく口を開いた。

『召喚されてからのお楽しみっ♪ ということではダメですか? 男か女かだなんてどうでもいいじゃないですか♪』

 それでもまだはぐらかそうとするのか、わざとらしいまでに明るい声で答える妖精だったが、夏樹は騙されなかった。

(ダメだ。男か女かということが肝心なんだ。そこが納得できたら召喚に応じてやるから早く答えろっ!)

 あくまでも譲る気配を見せない夏樹。

『わかりました♪ 観念してお答えします♪ 私は男です……♪ 名前はシャーオと言います♪ そりゃあわかってますよ♪ あなたは女の子♪ いまさら妖精とはいえ男の子になんかなりたくないですよね♪ でも、聞いてください……』

 すっかり妖精のシャーオは夏樹に召喚を断られるものと思って、その口調も愚痴モードに入っている。

(夏樹。山本夏樹っ! さあ、早く召喚してよ。ほら、ぐずぐずしないでっ!)

 相手の妖精が男の子だと確認できたとたんに、勢い良く召喚に応じる夏樹。……いいのか? そんなんで?

『だから……、えっ♪ 召喚に応じていただけるんですか? でも私は男の子ですよ。良いんですか♪』

 吃驚びっくりした様子のシャーオ。夏樹の反応は想定外らしい。

(大丈夫、大丈夫。だって私、男の子になりたかったんだもん♪)

 すでに口調が妖精化している夏樹だった。るるるん♪

『ああ、なるほど♪ そうだったんですか♪ では……。我、妖精族のシャーオおよび人間族の山本夏樹は、その互いの肉体を交換し、心を移し替えることに同意せり♪ この同意のもと我は召喚術を行うものなり♪ 異世界の壁を越え、生きとし生けるすべての存在の親であると同時に子である創造者よ♪ 我に力を♪  山本夏樹に祝福を♪ いざ来たれ♪ いざ行け♪ 命の入れ物、魂が纏いし衣服たる肉体よ♪ 新しい命、新しい魂に仕えよ♪』

 夏樹の気が変わらないうちにとでも思ったのか、シャーオはすぐさま召喚呪文を唱え出した。

『相互換身用召喚魔法陣展開♪ 次元通路確保♪ 召~喚~♪』

 そして夏樹は、夢の中で意識を失った……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ピピピッ ピピピッ ピピピッ

 どこか遠いところから目覚まし時計が鳴る音が聞こえてきて、夏樹は目を覚ました。やけに遠くから聞こえてくる電子音に、一瞬、違和感を覚えた夏樹だったが、すぐさま夢の中での記憶がよみがえってきたのだった。

「そうだっ! 私、妖精に召喚されて、妖精の男の子になったんだっけ♪」

 記憶がよみがえってくると同時に、生理なんてものがある生々しい女の身体から開放された喜びがこみあげてきた。

「早くどんな男の子になったのか見てみたいけど……。う~ん、ここは布団の中かな。いや、ここは布団の中にある元の私が着ていたパジャマの中だっ! まずはここから出ないと……。でもその前に……」

 そう言うと夏樹は、布団や服に包まれた暗闇の中で、自分の股間に手を伸ばしたのだった。ドキドキ……。付いているかな?

むにょ♪

「わははははっ♪ あるっ! ちゃんと付いてるよっ! お○ん○んがっ♪ 天晴れ、やったね、大成功!」

 そして次は手を股間から胸に移動させると、そこも念入りに触って確かめだした。

「胸もぺったんこだっ! これでもう暑苦しいブラジャーなんかしなくてすむっ! うれしいぃ~、私、ホントに男の子になったんだ♪ いや、男の子 だから“私”じゃおかしいな。よしっ、これからは自分のことは、“俺”と言うことにしよう。ふふふ、俺か……。かっこいいじゃねえか♪」

 さすがにもとから男の子になりたかっただけあって、順応するのが早い夏樹だった。その発言もかなり舞い上がっていて、妖精になったことによる今後の大変さには思い至らないようだ。

「うーん、早く新しい俺の身体を鏡に写して見てみたいなあ、それにだんだんと息苦しくなってきたし、さっさとここを出ることにしようかな」

 夏樹がそう思って行動しようと思った矢先、身体の上にあった布団の重さが、ふっと無くなった。

「こら、夏樹、いつまで寝てんのよ。目覚ましがさっきから鳴りっぱなしでうるさいでしょ!」

 実はさっきから鳴っていた目覚まし時計は夏樹のものだったのだが、そのあまりのうるささに同室の由美が夏樹が寝ているベッドの上の布団をはぎとったのだった。ついでに目覚まし時計も止めてくれたのか、さっきまで鳴っていた電子音が静かになっている。

「あれ? まさかこれは忍法うつせみの術! 夏樹ったらいつの間にこんな技を……」

 由美の目の前には器用にも身体の形のままに脱がれた夏樹のパジャマが横たわっていた。一瞬、思考が停止する由美だったが、次の瞬間、そのパジャマの中で何かがごそごそと動いているのを見つけてしまった!

「きゃあっ! 何かいるっ!! 夏樹っ、これ夏樹のいたずらでしょっ!? 隠れてないで出てきなさいよっ!」

 完全にこれは夏樹のいたずらだと思い込んだ。というか思い込もうとしている由美は、どこかに隠れているはずの夏樹を呼んだ。どうせベッドの下にでも隠れ ているのだろうと思って足元を覗きこもうとした瞬間、由美は聞きなれない声を聞いた。それはやけに甲高く、うわさに聞いた妖精の声のように思えた!?

「由美、ここ、ここ! 夏樹だよ。俺はこのパジャマの中にいるから、ちょっと助けてよ。けっこう息苦しいんだから早くしてくれるとうれしいんだけどな」

 確かに間違い無く夏樹のパジャマの中から聞こえる声は、自分を夏樹だと主張した。……にわかには信じられないが、ここ数日、夏樹は妖精に召喚されたがっていたことを考えると、あながちありえない話とは思えない。由美はそう結論づけると、意を決して夏樹のパジャマに手を伸ばしたのだった。

「夏樹、本当に夏樹なの? まさか本当に妖精に召喚されるとは思ってもみなかったわ。まったくもう、後先のことぜんぜん考えていないんだから」

 あきれ返った口調でぶつぶつと文句言いつつ、それでもテキパキと手を動かしてパジャマと下着の中から夏樹である妖精を救出(?)する由美だった。

「お説教は良いから早く出してくれ。俺は早く自分の姿を見てみたいんだ♪」

 すでに夏樹の第一人称が、“私”から“俺”に変わっていることに気づいた由美だったが、あえてそれには触れないでいた。これ以上話がややこしくなるのが嫌だったからである。その間にも由美の手は動き続け、とりあえず新しく妖精の身体になった夏樹をその目に捕らえることに成功したのだった。

「わかったわよ。はいっ、これでどう? まったく、生まれもつかぬ妖精になっちゃって、これからいったいどうするつもりなのよ。そりゃあ夏樹は妖精とはいえ男の子になれてうれしいのかもしれないけど……」

 なぜか夏樹の顔を真正面から見た由美は、言葉を飲み込むのだった。

「き、きれい……。美少年ってこのことなのね……。はうぅ~~」

 妖精少年となった夏樹の美しさは、由美の理性をノックアウトするのに十分なパワーがあった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「これが俺!?」

 逆パターンではあるが、お約束なセリフを言う夏樹。鏡の中には、この世のものとは思えないほどの美しさを備えた妖精少年がいた。軽くウェーブした軽やかな金髪。透き通るように白い肌。やや彫りが深い顔立ちに、すらりと長く伸びた手足。まさに少女漫画の中にしか存在しないような美少年が、今の夏樹だった。

「おお、すごい。ここまできれいな男の子がこの世に存在するとは!」

 由美の机の上に置かれたフェイスミラーの前で、ため息をつく夏樹。なんだかナルシストになってしまいそうなほどである。

「まったく、美少年になったものよね。……ところで夏樹。いいかげんに、ソレ……、しまったら?」

 そう言って由美が指差す先にあったものは……。

「ん? お○ん○んのこと? ははぁ~ん、由美ったら恥ずかしいんでしょ? ほらほら、どう? いいでしょ。本物のお○ん○んだよ♪ なんだったら触って みる? 大丈夫、俺が許すから♪」

 楽しそうに腰を振りながら、“うりうり”と由美を挑発する夏樹。まったくもってつい先刻まで女の子だったとは思えない振る舞いだ。

「誰が恥ずかしいもんですか! 赤ちゃんのよりもちっちゃなお○ん○んなんて見ても触ってもちっとも恥ずかしくなんかないわよ。でもそのままじゃ部屋から出ていけないじゃない。ただそれだけよ」

 夏樹のはしゃぎようにあきれ返る由美。確かに人間の男のそれとは違って妖精の男の子のそれは、見ていてちっともグロテスクな感じはしない。むしろ “かわいい♪”という表現が適している。事実、由美はそのまま手を夏樹の股間に伸ばすと、妖精サイズの小さなお○ん○んをちょいとつまんで、びにょ~ んと引っ張ったのだった。

「うわっきゃ!? こら、突然、何すんだよ!」

 初めての感覚に、思わず叫んでしまった夏樹は、由美の手から逃れると、慌てて自分の股間を手で隠したのだった。ちょっと顔も赤らんでいるのは、ようやく男の子としての恥ずかしさが芽生えてきたのだろうか……? うーん、あんまりその点については期待しない方がいいかな?

「突然って、何言ってんのよ。夏樹が触れと言ったから、触っただけでしょ」

 すっとぼける由美。確かに言い分には由美の側に理がある。

「くそう、冗談を真に受けるなよ! ……ところで部屋から出るって?」

 きょとんとする夏樹。その顔はマジで不思議そうだ。その何も考えていないような顔を見て、由美は頭を抱えた。

「もう、夏樹ったら妖精の男の子になれてうれしいのはわかったから、もう少し今後のことも考えなさいよね。これからやることがいっぱいあるでしょ。早くしないと一日が終わっちゃうわよ。とにかく私も付きあうから今日は学校を休んで、役所に行ったり買い物に行ったりしなくちゃね。それから親にこのことを報告しなくちゃいけないんじゃないの?」

 そこまで聞いて、ようやく夏樹の顔にも、納得の表情が浮かんだ。

「そうか、戸籍の変更に身の回り品の買い物か。でもお金がないぞ。……それに、親への報告か……。まあそれは電話ですませるから良いとして、問題はお金だよなあ。確かにいつまでも裸でいるわけにもいかないし。どうしよう?」

 ここで説明をしておくが、ここ大木南高校は、二つの半島によって囲まれた湾の西側にあるほうの半島の先端にある。湾にはいくつかの島が浮かび、そこで観光や漁業を営んで生活している住民がいるのだが、それらの島には義務教育である小中学校まではあるものの、高校は存在しなかった。

 というわけで島の子供たちは高校進学ともなると島に一番近い高校であるこの大木南高校へと進学するものが多く、たいていの場合は学校に付属の寮に入るのだった。

 したがって夏樹が親に現在の状況を報告しようにも、まずは電話しか手段がないのだった。

「じゃあさ、とにかく手持ちの布でそれを隠して寮長に報告しましょうか?」

 最初の驚きを何とか消化した由美は、ともかく夏樹がようやくまともな反応を示してくれたことに安堵するとそう言った。はてさて、これからどうなるのかな?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ちょっと! 香山さんっ! この妖精の男の子は本当に山本さんなわけなのね!」

 話を聞くなり興奮した様子で叫んだのは、ここ桜花寮の寮長である3年生の春風蘭華はるかぜ・らんかその人である。女子寮の寮長をしているだけあって、普段は理知的で素敵なお姉様という雰囲気を漂わせている彼女なのだが、さすがに今日ばかりはいつもの雰囲気のままではいられないらしい。

「ええ、信じられないかもしれませんけど、この妖精は間違いなく山本夏樹、本人なんです。寮長、信じてくださいますか?」

 やや声のトーンを落として答える由美。その言葉を驚きの表情を浮かべながら聞いている蘭華。

「そうですよ。寮長。俺が山本夏樹です♪ いやあ、妖精とはいえ、念願かなって男の子になれました♪」

 一方、机の上に乗せられた夏樹は、蘭華の顔を見上げながらとことん明るい声で喋っている。ちなみにまだ羽は出ていないので、飛べないでいる。

「ダメーーーーっ! そんなにも美少年なのに、“俺”なんて言っちゃダメーーーーっ! 夏樹ちゃん、あなたにふさわしいのは、“僕”よっ! それで決まり♪ ね、だからこれからは自分のことを“僕”って言うのよ。良いわね!」

 夏樹のセリフを聞いて、さらに興奮の度合いが上がった蘭華。そんなことが今の問題点ではなかろうにと横で聞いていた由美は思ったのだが、なぜだかわからないが何時になく真剣な蘭華の顔を見て口をつぐんでしまった。そして代わりに答えたのは夏樹であった。

「えーっ、嫌ですよ。俺は昔から、“俺”っていう言い方に憧れていたんですからね」

 静かに、しかし強くきっぱりと断る夏樹だったが、蘭華はひるまずに言葉を続けた。

「服……。どうするのかしらね。そう言えば、妖精さんの服って、とぉ~っても高いって聞いたことがあるけど、夏樹ちゃん。お金……、いくら持ってるの?  ふふふ、持ってないわよねぇ~。このまま、腰に布一枚を捲いただけでは、いつまでもいられないわよねぇ~」

 すべてを見透かすような態度でそう言う蘭華を見て、夏樹は由美を手招きして呼び寄せると、その耳にそっとつぶやいた。

「ねえ、由美……。妖精の服とかって、そんなにも高いの?」

 いまさらながらに、妖精のことについて、何も知らないことに思い至った夏樹は、ちょっと不安そうだ。

「うーん、私もよくは知らないんだけど、前にテレビで見た特集番組によると人間の服の軽く数倍、ものによってはそれ以上の値段らしいわよ。一着しか買わないならともかく、一式そろえるとなるとそれこそ何十万円もするんだって。服だけじゃなくて家具とか食器とかも必要なわけだから、トータルするとそれぐらいはかかるわね」

 由美の言葉は、それまで男の子になれて浮かれていた夏樹の心に、暗い影を落とすことに成功した。

「そんなにもするのっ! たっかぁ~い! 何でそんなにも!?」

 内緒話の予定だったのだが、思わず大声が出てしまった夏樹だった。そして夏樹が自分の今置かれた状況を把握したと見るや、蘭華はおもむろに話しだしたのだった。

「だからね、夏樹ちゃん。もしも夏樹ちゃんが、私の言うことを聞いて自分のことを“僕”と言ってくれたり、そのほかのことをしてくれると約束してくれるのなら、お金のことは何とかしてあげるわよ。どう? 取引する気は無い?」

 天使のような笑顔で微笑む蘭華。後に夏樹はアレこそ悪魔の微笑みだと思い知ったのだが、それは後の祭りであった。


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「寮長ぉ~、くすぐったい、くすぐったいですよぉ~。やめて、やめてくださいよぉ~っ!」

 女子寮の風呂場から今日も夏樹の叫び声が聞こえる……。ここで今までの状況を説明しておこう。

 夏樹が妖精少年になったことはまず学校側に知らされ、両親の元には学校を通じて第一報が送られた。その後すぐさま船でやってきた夏樹の両親は夏樹の 変わり果てた姿を見て気を動転させたが、夏樹自身がさほど気にしていないのを知るや、娘、いや息子を問い詰め、自分から妖精になりたがっていたことを確認すると、怒り出してしまったのだった。

 しかしここで蘭華が必死の説得をして、なんとか夏樹の両親の気持ちを落ち着かせた。2人は、『春風さんの娘さんの言うことなら』と、しぶしぶと現状を受け止めたのだった。ちなみに春風蘭華は、この地区一帯の観光協会の会長の娘であり、山本夏樹の両親は、湾に浮かぶ島で民宿旅館を経営しているのだった。

 つまりはそういう関係を使って蘭華は夏樹の両親を丸めこみ、すべてを自分に任せてくれと申し出て、その承認を受けたのだった。

 その後、役所での戸籍変更も済ませ。通販で買った服や生活用具一式も届き、夏樹の新生活がスタートしたのだった。もっとも夏樹という名前は男女どちら でも通用するということでそのままであったが……。

「ダメよ。夏樹ちゃん。私はあなたに色々と投資しているんですからね。ちゃんと約束は守ってもらうわよ。毎日私といっしょに生活すること。夏樹ちゃんもそれは納得したはずでしょ?」

 そう言いながら蘭華は手にいっぱいの泡を付けて、夏樹の身体をとっても丹念に洗ってあげるのだった。

「あはははは……。くすぐったい、くすぐったい。やめて、やめてぇ~! だいたい男の僕が何で女子寮の風呂に入らなくちゃならないんですか!?」

 言いつけどおり、ちゃんと自分のことを“僕”と言う夏樹。何しろ蘭華から60万円分もの妖精用の衣装や家具、そして食器を買ってもらっているので、軽々しくは逆らえないのだ。

「それはね、夏樹ちゃん。私が美少年をとぉ~っても好きだからなのよ。うふふふふ、いいわぁ~、金髪にすらりと長い肢体……。透き通るように白い肌。まさ にこれこそ理想の美少年っ! しかもより可愛い妖精サイズっ! これこそ私だけのジ○ベールなのよ。ああっ、好きよっ! 夏樹ちゃん」

 そう言いながらも石鹸の泡を付けた蘭華の手は、休むことなく夏樹の身体を愛撫、もとい、洗い続けている。そしてその手の動きにつれて夏樹の出す声はくすぐったさを我慢する声から、何かこう、違う種類の声へと変化していった。

「ああっ、だから、寮長……、ダメっ、……です……。そんなにしちゃ、僕、……ああ、うぅ~」

 なんだかやばそうなセリフにも聞こえるが単に身体を洗っているだけだから、あんまり脳内補完はしないように(笑)。

「ふふふ、じゃあこれで終わりと行きますか。夏樹ちゃん、いいわよね♪」

 そして蘭華は、石鹸の泡まみれになった夏樹に手桶からそっとお湯をかけて、泡を洗い落とした。

「うっぷぅー! 寮長、お湯、お湯が多すぎますよぉ~っ!」

 蘭華としてはそっとかけたお湯だが、ザバーッとお湯をかけられたように感じた夏樹であった。やはり単純に考えて、妖精が小さいが為に発生するトラブル (?)の1つであろう。

「ごめんね。夏樹ちゃん。じゃあ、タオルでふきふきしましょうね♪」

 まるで幼児に対するような口調で夏樹に話しかける蘭華だったが、その顔はちっとも申し訳なさそうでは無かった。むしろ楽しそうに笑っている。

「ねえ、春風さん。私たちも夏樹ちゃんに触らせてもらってもいい?」

 一段落すんだのを確認したのか、やはり風呂に入っていた寮生たちがうずうずした様子で蘭華に話しかけてきた。ちなみに今の時間、風呂に入っているのは、夏樹を除けばみんな3年生ばかりである。

「ええ、触るだけならね。でも持ってっちゃだめよ」

 こうして夏樹は、遠慮のないお姉様方の手でアソコを触られたり、アソコをいじられたり、アソコをつままれたり、アソコを引っ張られたり、果ては “チュッ”と口で吸われたり……、まではしていないけど、とにかく色々とされまくったのだった。

「ふにゃあ~、もうダメ……」

 さしもの夏樹も、何人ものお姉様方の遠慮の無い攻撃にはたじたじだった。これがもし夏樹が通常の人間サイズの男の子になっていたのなら、ここまではされなかった(?)はずだが、そこはそれ、今の夏樹は妖精サイズ。小さな幼児の男の子の裸を見ても、ちっとも恥ずかしくないのと同じで、美少年とはいえ妖精サイズである夏樹の裸を見ても、女の子達はちっとも恥ずかしさを感じないのだった。もちろん自分の裸を見られても、全然平気だ。

 逆に、これが妖精美少女の裸を、健全な高校生男子が見るというパターンであると、彼らには邪心(?)がある分、身体のごく一部が素直に反応することになり、とっても恥ずかしい状態になるのだが、そこはそれ、視覚イメージによるだけでは邪心(?)を起こすような仕組みになっていない女性の場合は、まったく大丈夫なのだった。

 蘭華だけは例外かもしれなかったが……。


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「もう、毎日毎日、こんなんじゃ身体がもたないですよ。寮長、聞いてるんですか? 何とかしてくださいよっ!」

 脱衣所で濡れた身体を拭いてもらいながら文句を言う夏樹。人間だったころには蘭華に対して思ってはいても口にすることはなかったであろう言葉が平気で出てくるようになっていた。妖精特有の、自分の心に対して素直な性格のなせる技であろう。

「良いじゃないの、減るもんじゃなし♪ ……あれっ? 夏樹ちゃん。あなた、もしかして感じちゃってたの?」

 夏樹の濡れた身体をやさしくタオルで拭いていた蘭華はふと手を止めると、まじまじと夏樹の股間を見つめながらそう聞いた。ちなみにその目は溢れんばかりの興味で輝いている。

「興奮って……、ああぁ~っ! 何これっ! もしかしてこれってっ!」

 蘭華の視線を追って、自分の股間を見た夏樹は、可愛いサイズながらも元気に立ち上がっているソレを見て、思わず声を上げた。

「りょ、りょ、りょ、寮長ぉ~。お、お先に失礼しま~す」

 一言そう言い残すと脱衣所の籠に入れられた自分の妖精服をひっつかみ、素っ裸のまま飛んでいってしまった……。ちなみにその羽は薄く透き通ったように光を反射するトンボ羽だった。

 夏樹は蘭華に対して自分の裸を見られることについてはすでに抵抗感がなくなってはいたが、さすがにああなっている股間を見られて平気という精神状態にはまだなってなかったのである。

「……そうか、今は9月末……。ちょっと早いけど、もうそんな季節なんだ。ふふふ、いよいよ巣ごもりの季節なのね……。」

 というわけで勢い良く飛んでってしまった夏樹の耳には、蘭華の意味深なつぶやき声は入らなかったのであった。まっ、入っていたとしてもどうにかなる ものでもなかったのではあるが……。


※作者注
 リメイク前の作品では、妖精たちには年に2回の発情期が設定されていました。そしてその発情期のことを、『妖精狂いの季節』と名付けていました。
 なおリメイク後にはそのような設定は無いことになっています。(以上)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「由美、由美、ちょっと開けてっ!」

 夏樹は、以前の自分の部屋の前まで戻ると、小さな手で、トントンとドアを叩いた。

「どうしたの? 最近珍しいじゃない。いつもは寮長の部屋にずっといるもんね」

 部屋の中から声がすると同時にドアがガチャリと開き、由美が顔を出した。

「大変なんだよ。由美っ! 妖精になってからこんな風になったことは今まで一度もないのに……。でも、ほら見てよ! これをっ!!」

 飛び込むようにして部屋の中に入った夏樹はそれまで抱えていた服で隠していた股間をさらけ出すと、いつもとは違った状態のソレを突き出した。

「うわっ!? ソレって……。すごいわね。夏樹のって普段はちっちゃいのに、こんなになっちゃうんだ。ふぅ~ん」

 いくらそそりたっているとはいえ妖精のお○ん○んでは人間である自分に対して何の害も成すことはできないことがハッキリとしているので、『怖い』と いう気持ちよりも、『興味』の方が先に出てきてしまった由美であった。

「もう、観察なんかしていないでっ! ……それで、これ、どうしたら良いと思う?」

 妖精の男の子になってから初めての体験なので、夏樹も元気なソレをどう扱って良いのか分からずに困っている。その声もちょっと元気がなさそうだ。やはり男の子になりたがっていたとはいえ、実際になってみるとそれなりに困難があるらしい。

「私に聞かないでよ。私に分かるわけないでしょ。とりあえず服を着なさい。まず話はそれからよ」

 由美はそう言うと、先ほど夏樹がほうり投げた服を指差した。

「それもそうだね」

 夏樹はそう言うと下着をはき、そして服を着だした。

「ねえ、夏樹……」

 夏樹が着ようとしている服を見て、由美は不思議そうに訊ねた。

「何? 僕、何か変かな?」

 そのまま服を着終えた夏樹は、由美に問い返した。

「何で風呂上がり後の夜に、パジャマじゃない、そんなにもきっちりとした服を着てるの? しかもその格好……」

 由美が不思議に思うのも不思議ではない。なんと夏樹は、白いワイシャツを着て、黒い半ズボンをはき、そしてそれを赤いサスペンダーでつりさげている。そ してさらにご丁寧なことに、濃い紫色の蝶ネクタイをしているのだった。

「だって……、寮長が、『美少年は絶対に半ズボンよっ!』ってうるさいんだもん。なんだか知らないけど、この服だって寮長が買ってくれたものだし……」

 自分でもちょっとなぁ~、と思う気持ちを無理やり納得させているのか、口調に力がない。

「まあ、寮長の気持ちも分からなくはないけど……」

 実際に半ズボンをはいた夏樹はとっても可愛い。許されるなら抱きしめて頬ずりしてやりたいぐらいだと由美も感じていたのだ。ちょっと妄想モードに入りかけた由美だったが、何とかその妄想を追い払うと話を元に戻すことにした。

「それは良いとして、夏樹。その……、ソレの状況からして、きっと『妖精狂いの季節』がいよいよやってきたのよっ! まず間違いないわ」

 ビシッと断言する由美。

「えっ、でも確か今度の『妖精狂いの季節』って、10月のはずじゃなかったっけ?」

 今はまだ9月末。夏樹が疑問に思うのも無理はない。

「個人差があるんでしょ。きっと」

 あっさりと結論を出す由美。ちょっと他人事モードが入っているようだ。

「うーん。これが妖精狂いの季節か……。そう言われればなんとなくムラムラとしてきたような。そうかそうか、変な病気じゃなかったんだ。……ふふふっ、でもせっかく男の子になったんだから、やっぱり体験してみないとね。アレを♪ でもちょっとだけ怖いような。……ねえ、由美。僕、どうしたらいいんだろう。 やっぱり妖精の女の子を探しに行った方が良いのかな? ほら、ラブな関係のお相手をさ♪」

 さすがに元から男の子になりたかっただけあって、事情が理解されたとたんに元気になった夏樹だった。そう、心も身体も。

「夏樹……」

 なぜか低く唸るような声で、夏樹に呼びかける由美。

「何? 由美? どうかしたの?」

 由美の態度が変化した理由を理解できない夏樹は、お気楽な声で問いかける。

「夏樹、今、あなたは何をしているの?」

 早く気づきなさいよと言わんばかりの雰囲気の由美。すでになんだか爆発寸前である。

「何って……。あれ? あれれれれ?」

 由美の指摘を受けて、ようやく今の自分が取っている行動に気がついた夏樹だった。

「ようやく気がついたようね。さっきから私の腕に股間をすりつけて何をやってるのよ!」

 そうである。さっきから夏樹は部屋の中の由美の机の上で着替えており、由美は机の前の椅子に座ってその机に肘をつきほほを支えていたのであるが、 夏樹はその由美の腕にしがみつき腰をへこへこと動かしていたのだった。

「あははは、別にこんなことするつもりじゃなかったんだ。無意識っ! そう、無意識なんだ!! 妖精狂いの季節って、そういうもんだろ? ほら、結局、妖精の発情期なわけだから……。だからこれは、あはははは……」

 言い訳をする夏樹だったが、止まらない腰の動きがもともと無い説得力をさらに台無しにしていた。

「もう、いつまで私の腕にソレを押し付けているのよ! このバカ妖精がーーーっ!!」

 とうとう本気で怒り出した由美によって夏樹はむんずと掴まれると、開け放たれた窓から投げ出されてしまったのだった。

「くそう~、これは妖精の男の生理現象なんだからしょうがないじゃないかーーーっ!!」

 ドップラー現象の実演をしながら、夏樹はキラリと夜空に光るお星様になった……。

「ふっ、美少年らしく、素敵な“おじさま妖精”にお相手してもらうのね」

 ここでこの話は終わりなのであるが、夏樹が本当の意味で妖精の男としての生理現象を知るのは、あと1週間の時間を必要としていたことだけを追加しておこう(笑)。 

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